内羽根と外羽根
今回は内羽根と外羽根の違いを解説したいと思います。
内羽根は、羽根(靴ひもを通す穴を備えたパーツ)がヴァンプ(つま先と甲を覆うパーツ)の下に取り付けられた意匠です。
羽根が甲と一体化しているように見えます。
ビジネスシーンでよく履かれている内羽根ストレートチップがその代表例です。
内羽根のことをオックスフォード Oxford 、バルモラル balmoral とも呼びます。
ただし、これらの言葉は示す範囲が異なる場合があり、注意が必要です。
時々、オックスフォードは、下の写真のような外羽根(後述)を含めた紐で結ぶ短靴の総称として使われることがあります。
バルモラルは、下の写真のようなヴァンプ(つま先と甲を覆うパーツ)がかかとまで伸びている内羽根を指すことがあります。
内羽根と対になるのが、外羽根です。
外羽根は、ヴァンプ(つま先と甲を覆うパーツ)の上に羽根が取り付けられています。
内羽根のように羽根が甲と一体化していません。
外羽根のことをダービー derby 、ブルーチャー blucher とも呼びます。
ダービーとブルーチャーを使い分けることはほとんどありませんが、区別することもできます。
ダービーは、クォーター(かかと、くるぶし下を覆うパーツ)に靴ひもを通す穴があります。
一方、ブルーチャーは、アッパーを1つのパーツで成型し、そこに羽根を取り付けています。
靴の歴史
現在の内羽根の短靴の直接のルーツは、1800年頃にオックスフォード大学の学生の間で人気があったサイドスリット付きのハーフブーツであるオキソニアンシューズ the Oxonian と考えられています。
Alan Flusser, Dressing the Man, New York: Harper Collins Publishers, 2002, p.193.
一方、外羽根の短靴は、プロイセン王国の陸軍元帥ゲプハルト・レベレヒト・フォン・ブリュッヘル Gebhard Leberecht von Blücher が仕立てさせたブーツにルーツがあると考えられています。
彼の歩兵隊がそれを着用し、1815年のワーテルローの戦いで勝利を収めたのにあやかり、ブリュッヘルの名を関した靴はヨーロッパ中の軍隊に採用されました。
Alan Flusser, Dressing the Man, New York: Harper Collins Publishers, 2002, p.195.
外羽根の短靴は、歩兵の靴を出自としていることから、現在でも内羽根よりもスポーティ(カジュアル)と位置付けられています。
現在見ることができる短靴に近い靴は1900年頃に登場し、1920年頃に普及しました。
O. E. Schoeffler, William Gale 著、高山能一訳(1981)『エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典〈日本語版〉』スタイル社、p.296
以上、短靴の基礎知識の紹介でした。
お読みいただきありがとうございました。
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