はじめに
次の記事の続きです。
まとめ
〈フォーマル度合い〉
靴のデザインをフォーマル度合いが高い順に並べて解説しました。
色によってフォーマル度合いは大きく変わってきますので、ここでは、黒のスムースレザー製とします。
下に行くほどスポーティーになっていきます。
1.フォーマルウェアに用いる靴
2.内羽根式の靴(セミブローグまで)
3.外羽根式の靴(セミブローグまで)
4.モンクストラップ
5.ウィングチップ
6.ノルウィージャン(日本では一般的にUチップ)
7.ローファー
これまで解説した内容について、基本的な考え方と、デザインとレザーの組み合わせの代表例とそれに適した場面、服装をまとめます。
〈基本的な考え方〉
1.White Tie, Black Tie には、オペラパンプスまたは内羽根プレーントーで、黒のパテントレザー(コーティングされたレザー)が適している。
2.Morning Dress には、メダリオン(トーキャップに施された穴飾り)のない内羽根式で、黒のスムースレザーが適している。
3.黒の靴は、重たい(重厚な)印象を与えることから、 温暖な気候には適していない。 (ただし、ローファー除く。)
4.ローファーは、軽快な外観から、 ウールのコートを羽織るような寒冷な気候には適していない。
5.白または白のコンビの靴は、温暖な気候やスポーツスタイルに適している。
〈デザインとレザーの組み合わせの代表例〉
①黒のパテントレザー
黒のパテントレザーで作られたオペラパンプス、内羽根プレーントーはWhite Tie, Black Tie のみに適しています。
②黒のスムースレザー
凡例
内:内羽根、外:外羽根、P:プレーントー、C:キャップトー、Q:クォーターブローグ、S:セミブローグ、W:ウィングチップ、WC:ホールカット、Loafer:ホースビットローファー、タッセルローファー、ペニーローファー、ベルジャンローファー
種類 | E | M | BF | Suit SS/AW | Sport Coat SS/AW |
---|---|---|---|---|---|
内P、WC | × | ○ | × | × | × |
内C・Q | × | ○ | ○ | × *1/○ | × *1*2/× *2 |
内S | × | × | ○ | × *1/○ | × *1*2/× *2 |
外P・C・Q・S | × | × | ○ | × *1/○ | × *1*2/× *2 |
Monk Strap | × | × | × | × *1/○ | × *1*2/× *2 |
Wing-tip | × | × | × *3 | × *1/○ | × *1/○ |
Norwegian | × | × | × | × *1/○ | × *1/○ |
Loafer | × | × | × | × *4 | ○/× *5 |
*1 黒は重たい(重厚な)印象を与え、夏場には基本的に着用しない。
*2 ネイビーブレザーを使った畏まった服装と組み合わせることは可能。
*3 メダリオンがない場合、例外的に○。
*4 バミューダスーツのような例外もあるが、基本的に組み合わせない。
*5 学生を除き、ウールのコートを羽織るような寒冷な気候には基本的に着用しない。
E:Evening Dress, M:Morning Dress
BF(Business Formal): ネイビー・ミディアムグレー・チャコールグレーで、
無地やシャドーストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ等柄が控えめな梳毛スーツ
Suit:Business Formal に該当しないスーツ全般。
SSは、主に、シアサッカー、サンクロス等の生地や、リネン、コットン等の素材を使った温暖な気候に合ったスポーティーなスーツ。
AWは、主に、フランネル、ツイード、コーデュロイ等の生地を使った寒冷な気候に合ったカントリーなスーツ。
Sport Coat:上下が共地でない、いわゆるジャケパンスタイル
③茶のスムースレザー
種類 | E | M | BF | Suit SS/AW | Sport Coat SS/AW |
---|---|---|---|---|---|
内P、WC | × | × | ○ | × | × |
内C・Q | × | × | ○ | ○ | × *1 |
内S | × | × | ○ | ○ | × *1 |
外P・C・Q・S | × | × | ○ | ○ | ○ |
Monk Strap | × | × | × | ○ | ○ |
Wing-tip | × | × | × *2 | ○ | ○ |
Norwegian | × | × | × | ○ | ○ |
Loafer | × | × | × | × *3 | ○/× *4 |
*1 ネイビーブレザーを使った畏まった服装と組み合わせることは可能。
*2 メダリオンがない場合、例外的に○。
*3 バミューダスーツのような例外もあるが、基本的に組み合わせない。
*4 学生を除き、ウールのコートを羽織るような寒冷な気候には基本的に着用しない。
E:Evening Dress, M:Morning Dress
BF(Business Formal): ネイビー・ミディアムグレー・チャコールグレーで、
無地やシャドーストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ等柄が控えめな梳毛スーツ
Suit:Business Formal に該当しないスーツ全般。
SSは、主に、シアサッカー、サンクロス等の生地や、リネン、コットン等の素材を使った温暖な気候に合ったスポーティーなスーツ。
AWは、主に、フランネル、ツイード、コーデュロイ等の生地を使った寒冷な気候に合ったカントリーなスーツ。
Sport Coat:上下が共地でない、いわゆるジャケパンスタイル
コメント
コメント一覧 (4件)
良い記事をありがとうございます。楽しく見させてもらってます。質問なのですが、茶スムースレザーの3アイレットの外羽根ウィングチップはどうでしょうか?少しフォーマルになるとのことなので、ダークスーツも大丈夫とかなるのでしょうか?もしくはかなりフォーマルになってツイードなどには合わせないほうが良いのでしょうか?よろしければご回答下さい。よろしくお願いします。
お読みいただきありがとうございます。
ご質問を受けて、うまく伝えられていなかったことを反省し、記事を加筆修正しておりました。
返信までお時間をいただき、申し訳ありませんでした。
まずはじめにお伝えしたいのは、ウィングチップは、内羽根であろうと、随分カントリー寄りな意匠であるということです。
内羽根ウィングチップは、ツイードスーツやツイードジャケットととても相性が良いです。
したがって、茶のスムースレザーの3アイレットの外羽根ウィングチップは、ツイードスーツやツイードジャケットとよく合います。
次に、ダークスーツという曖昧な表現をやめ、ビジネスフォーマルという言葉で、より具体的かつ示す範囲を狭めました。
これは、 ネイビー・ミディアムグレー・チャコールグレーで、 無地やシャドーストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ等柄が控えめな梳毛スーツを示しています。
お堅い職場に着ていっても何も言われないスーツというイメージです。
これらのスーツには、さすがに内羽根であっても、いわゆるウィングチップは適していません(例外は本文を参照ください)。
したがって、ビジネスフォーマルには、茶のスムースレザーの3アイレットの外羽根ウィングチップは適していません。
ビジネスフォーマル以外のスーツと一括りにしてしまえば、ウィングチップを合わせることは基本的に○となります。
ダークスーツと言ってしまうと、暗い色のスーツと考え、ミディアムグレー地に黒のグレンチェックのスーツや濃紺地にストライプのフランネルスーツを思い浮かべる人も少なからずいらっしゃると思います。
このようなスーツに、黒の内羽根ウィングチップを合わせることができます。
ウィングチップは、あくまでもカントリー寄りに軸足があるものの、これらの組み合わせも可能というイメージです。
当然、ツイードスーツであれば、内羽根ウィングチップ、外羽根ウィングチップいずれも相性が良いです。
このあたりの微妙な調子は、掲載したイラストレーションから汲み取っていただけたら幸いです。
生地の色・柄・織や、靴の色・素材・シルエット等ケースバイケースとなるところです。
もう一つ、3アイレットの件は本文から削除しました。
これは詳しく説明しようとして、逆に誤解を招く表現であったと反省しました。
今回は意匠に絞って話を進めていますが、実際には、靴とその他服装の組み合わせに影響を与えるものにシルエットがあります。
例えば、ウィングチップの項で掲載した JM WESTON 590 トリプルソールダービーは、ソールの分厚さ、ウェルトの張り出し、ラストから、スポーティーなシルエットをしています。
仮に、アイレットを5から3にしたところで、随分スポーツ寄りな靴に変わりありません。
一般の既成靴であれば、アイレットが少ない靴はシルエットがドレス寄りであるという前提のもと、言及したことでした。
代表例を挙げると、2アイレットの CORTHAY のアルカは外羽根でも随分ドレス寄りのシルエットをしています。
このあたりもケースバイケースとなるので、一般化して話を進めている本文には不要な表現でした。
以上となります。
今回いただいたご質問はよい気づきになりました。
ありがとうございました。
繰り返しになりますが、記事を加筆修正いたしましたので、ご興味があれば、ご覧ください。
今後ともよろしくお願いいたします。
コメント失礼致します。
いつも興味深く拝見させていただいております。
靴と服装の合わせ方について解説されておりますが、グレインレザー(いわゆるシボ革)の靴の立ち位置はどういったところになるでしょうか。個人的な意見としては、カジュアルな趣向になるので、スエード等と近い立ち位置になるのかなと思ったのですが、ご意見をお伺いいたしたく。
お手数をお掛けしますが、よろしくお願いいたします。
ゆぴ坊様
いつもフォローありがとうございます。
シボ革(ここではシボのはっきりした革と定義します)の靴を考える前に、まず、靴と服装の組み合わせにおいてスムースレザーの靴と起毛素材の靴の違いを改めて確認したいと思います。
例えば、内羽根キャップトー・クォーターブローグ・セミブローグ、外羽根プレーントー・キャップトー・クォーターブローグ・セミブローグの意匠に茶のスムースレザーを使用した靴はBusiness Formalに合わせられますが、それら意匠で起毛素材を使用した靴はBusiness Formalに合わせられないという違いがありました。
つまり、スムースレザーと起毛素材の間にはBusiness Formalに合わせられるか否かという違いがありました。
(※Business Formal: ネイビー・ミディアムグレー・チャコールグレーで、
無地やシャドーストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ等柄が控えめな梳毛スーツ)
話を戻して、例えば、シボ革の内羽根キャップトーをBusiness Formalに合わせるかというと、基本的には合わせません。
(補足:主にカントリーな意匠にシボ革は用いられ、シボ革の内羽根キャップトーは既製品でほとんど販売されておりません。既製品であったとしても、キャップにピンキングをいれるといったスポーティな意匠を取り入れていることが多いです。)
したがって、シボ革の靴のドレス度合いは、起毛素材寄りであり、靴と服装の組み合わせをまとめた表を見る際、基本的に起毛素材をシボ革と読み替えてご理解いただいて構いません。
装ひ研究所 管理人