はじめに
私の周りでは社会人になってから靴磨きをはじめたという声をよく聴きます。
きっかけは様々で、営業職で人前に出るからと先輩に勧められたという人もいれば、就職祝いに買ってもらった靴を大事にしようと自ら始めた人もいます。
日常的にビジネススーツを着用する人であれば、靴磨きは身だしなみの1つだと思います。
しかし、いざ靴磨きをはじめようとすると、何を買い揃えればよいか迷ってしまいます。
靴に塗るものだけでも、乳化性クリーム、油性クリーム、油性ワックス、デリケートクリーム、レザーローション、レザーオイルと種類があって、各メーカーが複数の商品を販売しています。
本当に必要なものだけに絞って買わないと、無駄に出費がかさんでしまいます。
靴磨きの方法を調べると、人によって多少の違いはあれど、複数のステップがあり、一回の靴磨きに時間がかかりそうです。
毎回プロが行うようなフルコースの靴磨きを頻繁に行っていては、やがて靴磨きが億劫になって、やめてしまいます。
そこで、今回の記事では、無駄な出費を抑え、靴磨きを継続できるよう、一般的な靴磨きのステップを極力簡素化することを志向します。
ステップ自体を省くことや、毎回すべてのステップを行うのではなく、ステップによっては実施頻度を減らすことで、一回の靴磨きに掛ける時間を短くします。
次のようなスムースレザーに対する一般的な靴磨きのステップに対して、簡素化を検討します。
(参考:サフィール お手入れマニュアル 基本編 http://saphir-jp.com/manual/)
簡素化にあたっては、靴磨きを生業にしている職人やシューケア商品の販売員等複数人に伺った話や、自ら実践してきた経験を基に検討を行います。
結論だけ確認したい方は、最後の「まとめ」をご覧ください。
目的:靴全体や縫目等に入った砂埃を掃き出す。
方法:シューツリーを挿入し、馬毛ブラシ等毛足が長く適度にコシのあるブラシでブラッシングを行う。
※写真では紐をつけたままですが、タン(甲中央の部分の内側につく泥除け)をブラッシングする際には紐を外した方が良いです。
目的:新たに塗布するクリームが浸透しやすくなるよう、汚れや古いクリーム等を落とす。
方法:クリーナーを綿100%の柔らかい布(使い古したTシャツでも可) に適量取り、靴をやさしくなでる。
目的:栄養補給、補色
方法:少量のクリームをペネトレイトブラシ(アプライブラシ)に取り、全体に薄く塗り伸ばす。
目的:皮革のしわや縫目等特定の箇所に偏らないよう、クリームをムラなく均一になじませる。
方法:豚毛ブラシ等しっかりと腰のあるブラシでブラッシングを行う。
目的:余分なクリームを取り除いて、つやを出す。
方法:2~3分ほど待ってから、綿100%の柔らかい布(使い古したTシャツでも可)で靴全体を磨き込む。
目的:多量の雨が皮革に染み込まないようにする。
方法:防水スプレーを靴から20〜30cmほど離して吹き付ける。
それでは、これらステップ1〜6に対して簡素化を検討します。
ステップ1:ブラッシング
靴を一日履けば、砂埃が付着することから、帰宅したら、3分でいいので、軽くブラッシングを行うことが望ましいです。
毎日行うことはこれだけでよいです。
馬毛ブラシを必ず購入しましょう。
適度に大きいものを選べば、一度に広い面積をブラッシングできるので楽です。
M.モゥブレィのプロ・ホースブラシがコスパがよく、おすすめです。
ステップ2:汚れ落とし
クリーナーを使うのは、新たに塗布するクリームを浸透しやすくするためです。
ただし、必ずしもクリーナーで古いクリームを取らないと、新しいクリームが浸透しないというわけではありません。
クリーム自体に有機溶剤が入っており、古いクリームを溶かしながら、新しいクリームを浸透させることができます。
したがって、このステップは毎回行う必要はありません。
半年に一回とか、1年に一回とか、クリームを何度も塗って古いクリームが蓄積されてきた頃に行います。
クリーナーを購入するのは靴磨きを始めてしばらく経ってからでよいです。
さっと拭くだけで汚れや古いクリームが落ちる、適度に洗浄力のあるブートブラックのツーフェイスプラスローションがおすすめです。
そんなに使わないので、小さいボトルのものを購入すれば十分です。
ステップ3:クリーム塗布
クリームは、サフィールノワールのクレム1925を購入することを強くお勧めします。
クレム1925の特徴は次の通り。
- クリームの伸びがよいので、ほんの少量を使えばよいので経済的。クリームの量が少量で済むことで、クリームを拭き取る工程も楽になる。
- 揮発しにくい油性クリームであり、乳化性クリームに比べて塗布する頻度が少なくて済むので、経済的かつ手入れの負担が軽減する。
- 油性クリームであり、防水効果が期待できる。
毎日ブラッシングで靴を手に取る際に、なんとなく乾燥してきたと感じたときに塗布してください。
クレム1925は揮発しにくく、持続性が高いので、それほど頻繁に塗る必要はありません。
履く頻度・天候にもよりますが、私の場合、大体2か月前後に1回塗布するような頻度に落ち着いています。
ペネトレイトブラシを使って、ほんの少量のクリームを薄く伸ばして塗り込んでください。
クリームの色が混ざってしまわないよう、クリームの色ごとにペネトレイトブラシを使い分けてください。
ペネトレイトブラシに比べると塗りづらさはありますが、歯ブラシで代用することもできます。
ステップ4:ブラッシング
ブラッシングはクリームをムラなく均一になじませるために行う工程です。
クレム1925は伸びがとても良く、ほんの少量を薄く伸ばして塗り込むことができるため、ペネトレイトブラシを使って十分均一になじませることができます。
したがって、このステップは省きます。
このステップを行おうとすると、豚毛ブラシをクリームの色ごとに買い揃えることになるので、省きたいステップです。
ステップ5:磨きこみ
しっかり磨きこむことで、クレム1925は油性であり、高級感のある鋭い光沢がでます。
専用の布を買う必要はなく、使い古した綿100%のTシャツで十分です。
使い古した綿100%のTシャツがなければ、メリヤスウエス(綿100%の端切れ)をホームセンターで購入してください。
ステップ6:防水スプレーの塗布
外回り等雨の中一日中歩き回ることや大雨で外を歩くことがなければ、クレム1925の持つ防水効果で十分であり、このステップは省きます。
防水スプレーを用いなくてよいことはサフィールの英語版ホームページにも記載があります。
まとめ
靴磨きで揃える道具と、靴磨きの方法をまとめたいと思います。
〈靴磨きで揃える道具〉
- ① サフィールノワール クレム1925
- ② 馬毛ブラシ (おすすめ:M.モゥブレィのプロ・ホースブラシ)
- ③ ペネトレイトブラシ ※クリームの色ごとに使い分ける
- ④ 使い古した綿100%のTシャツまたは綿100%のメリヤスウエス
- ⑤ シューツリー
- ⑥ クリーナー (おすすめ:ブートブラックのツーフェイスプラスローション)
※すぐに使わないので、靴磨きをはじめてしばらく経ってからの購入でよい。
〈靴磨きの方法〉
ブラッシング これだけでよいです!
帰宅したら、玄関で靴にシューツリーを挿入し、馬毛ブラシでブラッシング(紐は外さなくてよい)。
ブラッシングの際に皮革が乾燥していると感じたら(大体2か月に1度くらい)、次の手順で手入れを行う。
紐を外して、靴にシューツリーを挿入し、馬毛ブラシでブラッシング。
ペネトレイトブラシでごく少量のクレム1925を取って、薄く伸ばして塗り込む。
5分後、使い古した綿100%のTシャツで余分なクリームを取るように磨きこむ。
半年に1度や年に1度等クリームが蓄積してきた頃に、 次の手順で手入れを行う。
紐を外して、靴にシューツリーを挿入し、馬毛ブラシでブラッシング。
使い古した綿100%のTシャツにクリーナーを適量取って、靴をなでるように古いクリームを取る。
ペネトレイトブラシでごく少量のクレム1925を取って、薄く伸ばして塗り込む。
5分後、使い古した綿100%のTシャツで余分なクリームを取るように磨きこむ。
以上、靴磨きの方法のご紹介でした。
この程度の靴磨きなら、継続的に行えるような気がしませんか?
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