ジャケットのボタンの掛け方

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ジャケットのボタン

ジャケットのボタンの掛け方を意識したことはありますか。
日常的にスーツを着る方であれば、一番下のボタンは掛けないようにしていると答えるかもしれません。
大人になれば、ジャケットを着る機会はあるものの、その着方を教わる機会はないのではないでしょうか。
今回は、ジャケットのボタンの掛け方を解説したいと思います。

シングルブレステッドのボタンの掛け方

シャツは元々下着であり、人に見せるものではありませんでした。
下のイラストは18世紀の装いです。シャツがほとんど見えていないことが確認できます。
シャツを極力見せないという観点から、ボタンを1つも掛けていない状態は避けてください。


















ただし、次のように、すべてのボタンを外してもよい場合があります。
1つは、ウエストコート(ベスト)を着用している場合です。
ウエストコートがあれば、シャツを覆うことができ、ジャケットのボタンを外しても礼を失することにはなりません。

外しています。
(1933.9 esquire)
留めても間違いではありません。
(1934.3 esquire)















2つ目は、座る場合です。
シャツは下着であり、人様に見せるものではないという本来の常識に照らせば、ウエストコートを着用していなければ、座るときもボタンを掛けておくことが望ましいです。

しかし、時代の流れの中で、装いは簡素化され、シャツ1枚で出歩くことができるようになりました。
近年では、ボタンを外すと、窮屈さを感じない、ジャケットが皺になりにくい等の理由で、”立っているときは掛けて、座るときは外す”ことがマナーという考え方が受け入れられるようになりました。
現代においては、”座るときはボタンを外してもよい”という解釈が正しいです。
したがって、座っているときにボタンを掛けたままでいることは問題なく、むしろ、その方が望ましいです。
例えば、チャールズ皇太子はほとんどの場合、座っているときでもボタンを掛けています。

ウエストコート着用(2つボタン1つ掛け)
(1936.7 esquire)
3つボタン1つ掛け(1934.7 esquire)
3つボタン2つ掛け
(1940.9 esquire)
1つボタン
(1935.1 esquire)
Chris Jackson/Getty Images
https://www.harpersbazaar.com/jp/celebrity/
celebrity-fashion/g33398458/
camillaparkerbowles-fashion-200723-hns/?slide=13

立っているとき座るときに関わらず、一番下のボタンは掛けないでください。
一般に、一番下のボタンを掛けないことを前提に仕立てられており、掛けてしまうと、不自然な皺が寄る等シルエットが崩れてしまいます。

パドックカット Paddock cut (通常より高い位置にボタンが取り付けられたジャケット)のように、すべてのボタンを掛けることを前提としたジャケットは例外です。

パドックカット(1939.10 esquire)

シングル3つボタン2つ掛け

上2つを掛ける、真ん中のみを掛ける、一番上のみを掛けるから選択してください。
一番上のみを掛ける装いは、19世紀後半までに比較的よく見られた装いであり、1930年代以降あまり見かけなくなりました。
現代では、上2つを掛ける、または、真ん中のみを掛けることが正しいという考え方もあります。

上2つを掛ける(1938.5 esquire)
真ん中のみ掛ける
一番上のみ掛ける
John Peacock,
MEN’S FASHION
THE COMPLETE BOOK,
New York:
Thames and
Hudson Inc., 1996, p.114.

シングル3つボタン1つ掛け(段返り)

段返りは下襟にボタンホールがある意匠です。
シングル3つボタン1つ掛け(段返り)は、一番上のボタンが掛けられない仕様になっていることから、2つボタン1つ掛けと同じ扱いとなります。
真ん中のボタンを掛けてください。

1936.1 esquire

シングル2つボタン1つ掛け

一番上のボタンを掛けてください。

1936.5 esquire

シングル1つボタン

通常、1つボタンはフォーマルウェアです。
ボタンを掛けてください。

シングルブレステッド1つボタン(1935.1 esquire)

ダブルブレステッドのボタンの掛け方

ダブルブレステッドは掛けられないように仕立てられているボタンを除いて、掛けられるボタンはすべて掛けることが基本になります。
ただし、立っているとき、座るときに関わらず、ボタンを1つも掛けていない状態にならないとき、一番下のボタンを外すことができます

ダブル6つボタン3つ掛け

ダブルブレステッド6つボタン3つ掛けは、20世紀初期あたりまでに見ることができる古典的な意匠です。
一番下のボタンを外すことができます。

John Peacock, MEN’S FASHION THE COMPLETE BOOK,
New York: Thames and Hudson Inc., 1996, p.113.

ダブル6つボタン2つ掛け

一番下のボタンを外すことができます。

ダブル6つボタン1つ掛け(段返り)

ダブルブレステッド6つボタン1つ掛け(段返り)は、ほとんどの場合、ボタンが逆ハの字に配置されており、上2つのボタンは元々ボタンが掛けられないように仕立ててあります。
一番下のボタンを必ず掛けてください。

1940.6 esquire
1935.3 esquire

ダブル4つボタン2つ掛け

一番下のボタンを外すことができます。

1940.2 esquire

ダブル4つボタン1つ掛け(段返り)

ダブルブレステッド4つボタン1つ掛け(段返り)は、多くの場合、上下のボタンが同一線上になく、上のボタンは元々ボタンが掛けられないように仕立ててあります。
一番下のボタンを必ず掛けてください。

(1941.8 esquire)

以上、ジャケットのボタンの掛け方の解説でした。
お読みいただきありがとうございました。
ご感想、ご質問がございましたら、どうぞお気軽にコメントください。

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • いつも拝見しております。
    先日「シャレード」という映画を見て、ジャケットのボタン掛けについて気になることがありました。
    主人公(ケーリー・グラント)が段返り3つボタンのスーツを着用しているのですが、下2つ、もしくは一番下のボタンだけ閉めているシーンが目立ちました。
    エレガントといわれるケーリー・グラントですので、何か意図があるのかと気になりました。
    ご存じでありましたら、ご教授いただけますと幸いです。
    よろしくお願いいたします。

    • ユウキ様

      フォローありがとうございます。

      sprezzaturaの範疇と捉えていいのではないかと思います。
      ボタンダウンカラーのボタン外しや本切羽のボタン外し、小剣を長く垂らす等の形式ばっていない、力の抜けた着こなしです。
      装いの不完全さや違和感からくるある種のおもしろさや、独自のスタイルの確立という意味で良く捉えられる一方で、
      時と場合や相手によってはだらしない印象を与えることもあります。
      (本人はわざとボタンを外していたつもりでも、ボタンが外れているよと指摘されたという話や、だらりと垂れた小剣をトラウザースにしまうよう上司に注意されたという話を聞いたことがあります。)

      「型があるから型破り。型が無ければ、それは形無し。」というように、まずは原理原則を学ぶということが大切であり、
      本サイトでは原理原則に焦点を当てています。

      話は変わりますが、前回のウィングチップの装いに関するご質問や、前々回の財布・名刺入れの色のご質問に答えてまいりました。
      時間をつかって考え、回答を執筆しているものですから、回答がお役に立つ立たないにかかわらず、お礼等返信するのが礼儀と思います。(ユウキ様にかぎらずですが)

      装ひ研究所 管理人

  • ご回答ありがとうございます。大変参考になりました。
    前回、前々回とご回答のお礼をせずに大変申し訳ございませんでした。
    今後とも何卒よろしくお願いいたします。

    • ユウキ様

      ご返信ありがとうございます。
      お役に立てたのであれば幸いです。
      またお気軽にお問い合わせください。

      装ひ研究所 管理人

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