はじめに
近年、英国回帰の影響か、ウエストコート waistcoat (ベスト)が販売されているのをよく見かけるようになりました。
今回は、間違いやすいウエストコートの着方を解説したいと思います。
間違い①一番下のボタンを留める
ジャケットのボタンの掛け方で解説したように、シャツは元々下着であり、人に見せるものではありませんでした。
シャツを極力見せないという観点から、ボタンは留めるものです。
下のイラストのように、イブニングウエストコート等礼装用のウエストコートやダブルブレステッドのウエストコートは、すべてのボタンを留めてください。
しかし、現在販売されているウエストコートの多くは、一番下のボタンが他のボタンと同一線上になく、離れて付けられている等ボタンを留められないように仕立てられています。
無理にボタンを留めてしまうと、不自然な皺が寄る等シルエットが崩れてしまいます。
このようなウエストコートは一番下のボタンを留めないでください。
すべてのボタンを掛けることを前提としたウエストコートは例外です。
間違い②下からネクタイが覗く
ウエストコートの下からネクタイが覗く着方は比較的よく見かけます。
ウエストコートは、トラウザースとシームレスに繋がるように着用するものであり、ウエストコートとトラウザースの間からネクタイが覗くのは望ましくありません。
ウエストコートの着用が一般的であった時代、ネクタイは現在よりも短かったため、ウエストコートの下からネクタイが覗くことは問題になりませんでした。
ウエストコートに内ポケットがあれば、そこに剣先を入れる又は大剣か小剣のいずれかが十分長くなるように結び、剣先をトラウザースにしまい込む等してネクタイの露出を防ぐことができます。
間違い③下からシャツが覗く
同様の理由で、ウエストコートとトラウザースの間からシャツが覗くのも望ましくありません。
シャツが覗くパターンは2つあると思います。
1つは、ウエストコートの着丈が短い場合です。
ウエストバンド waistband(トラウザースの腰帯部分)をちょうど覆うくらいの着丈が望ましいです。
手を挙げたり、お辞儀をしたりすると、少しシャツが覗くような長さです。
2つ目は、着丈は正しくても、シャツが出てきてしまい、ウエストコートの下からシャツが覗いてしまう場合です。
体を動かすことで、シャツが多少出てしまうのは仕方がないことではありますが、シャツが出ていないか、何度も確認しなければならないことはわずらわしいものです。
ほとんどの場合、ブレイシス(サスペンダー)を用いることで、ブレイシスがシャツが出るのを受け止めて、シャツが露出することを防ぐことができます。
間違い④ベルトを使う
ウエストコートの下にベルトをしてしまうと、バックルを含むベルトの厚みによって、ウエストラインが不自然に膨らんでしまいます。
バックルがウエストコートの下から覗くのも望ましくありません。
ベルトを使わず、ブレイシスでトラウザースを吊るようにしてください。
最近では、ウエストコートにベルトを合わせる着こなしが雑誌等で見かけるようになりました。
“ウエストコートにはベルトを合わせてはいけない、ブレイシスを合わせるべき”と正直に言ってしまうと、ウエストコートを売りづらいということが背景にあるのだと思います。
aboutで述べたように、既製服が主流となった現代では、装いの原則を伝えることより、大量に売ることが優先されてしまいます。
以上、間違いやすいウエストコートの着方の解説でした。
お読みいただきありがとうございました。
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