はじめに
スーツやジャケットの袖ボタンを見ると、そのほとんどは3つか、4つであると思います。
それ以外の個数の袖ボタンも稀に見つけることができますが、袖ボタンの数に何か意味はあるのでしょうか。
袖ボタンの数は、特定の連隊を表す
袖ボタンの数は、特定の連隊を表しています。
The five buttons on each sleeve signify that this is a Welsh Guards blazer.
Different numbers of buttons on the sleeves denote specific regiments as follows: one button—Grenadier Guards; two buttons—Coldstream Guards; three buttons—Scotch Guards; four buttons—Irish Guards.袖の5つのボタンは、ウェルシュガーズのブレザーであることを表している。
Esquire 1941.6
袖のボタンの数は、1つでグレナディアガーズ、2つでコールドストリームガーズ、3つでスコッツガーズ、4つでアイリッシュガーズと、特定の連隊を表している。
上記で挙げられている連隊は、 英国陸軍近衛師団 Guards Division です。
赤い服を着たバッキンガム宮殿の衛兵を思い浮かべてください。
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/バッキンガム宮殿.jpg)
これら衛兵は、次の5つの連隊に分かれています。
- グレナディアガーズ Grenadier Guards (後のイングランド王チャールズ2世によって1656年に創設)
- コールドストリームガーズ Coldstream Guards (イングランドのアルベマール公爵によって1650年に創設)
- スコッツガーズ Scots Guards (スコットランドのアーガイル侯爵によって1642年に創設)
- アイリッシュガーズ Irish Guards (ボーア戦争で戦ったアイルランド人を称えるために1900年に創設)
- ウェルシュガーズ Welsh Guards (「ウェールズ人の近衛連隊もつくるべき」との理由から、1915年に創設)
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/the-guards.jpg)
各連隊とボタンの数の対応関係は次のようになっています。
連隊 | ボタンの数 |
---|---|
グレナディアガーズ | 1つ |
コールドストリームガーズ | 2つ |
スコッツガーズ | 3つ |
アイリッシュガーズ | 4つ |
ウェルシュガーズ | 5つ |
説明の都合上、ウェルシュガーズから順に説明したいと思います。
ウェルシュガーズ Welsh Guards
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/welsh-guards.jpg)
袖ボタンは5つ、上着のボタンも5つで一組となっています。
5つのボタンがウェルシュガーズを示しています。
アイリッシュガーズ Irish Guards
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/irish-guards-scaled.jpg)
袖ボタンは4つ、上着のボタンも4つで一組となっています。
4つのボタンがアイリッシュガーズを示しています。
スコッツガーズ Scots Guards
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/Scots-Guards.jpg)
袖ボタンは3つ、上着のボタンも3つで一組となっています。
3つのボタンがスコッツガーズを示しています。
コールドストリームガーズ Coldstream Guards
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/Coldstream-Guards-scaled.jpg)
袖ボタンは4つではありますが、2つで一組にして2組となっています。
上着のボタンも2つで一組となっています。
2つのボタンがコールドストリームガーズを示しています。
グレナディアガーズ Grenadier Guards
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/Grenadier-Guards.jpg)
Grenadier_Guards_sergeant_major.jpg
袖ボタンは4つではありますが、ひとまとまりにはなっていません。
上着のボタンも一つ一つのボタンが離れて配置されています。
1つのボタンがグレナディアガーズを示しています。
これら連隊との関係性をもって、1つボタンまたは2つボタンはイングランド、3つボタンはスコットランド、4つボタンはアイルランド、5つボタンはウェールズと、地域と関連付ける人もいます。
以降では、1つボタンや2つボタン、5つボタンの例を見ていきたいと思います。
1つボタンの例
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/SARTORIA-SCALPINO.jpg)
https://www.mens-ex.jp/archives/1190358
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/SARTORIA-SCALPINO2.jpg)
https://www.mens-ex.jp/archives/1190358
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2021/05/Utip5.jpg)
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/04/1939.8p130.jpg)
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/09/1939.10p142_.jpg)
コーデュロイスーツを
着た紳士。
(1939.10 esquire)
1つボタンはスポーティなジャケット・スーツに見られます。
2つボタンの例
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/VAN.jpg)
袖ボタン2つといってまず思い浮かべるのはアイビースタイルだと思います。
上の VAN のブレザーや下の J.PRESS のブレザーが代表例です。
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/jpress.jpg)
2つボタンはスーツにも採用されます。
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/11/1934.3p105_.jpg)
HACKETT LONDON (1983年創業の紳士ブランド)のスーツは、2つボタンを一組にして配置することが特徴となっています。
これは、上述のコールドストリームガーズに着想を得ているものと思われます。
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/hackett.jpg)
5つボタンの例
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/wire-6163814-1542186449-770_634x950.jpg)
As-Prince-Charles-turns-70-famous-fashion-moments.html
5つボタンで思い浮かべるのは、チャールズ皇太子やウィンザー公が着用しているオーセンティックなダブルブレザーです。
既製品ではほとんど見かけません。
![](https://fashion-research-institute.com/wp-content/uploads/2022/01/df620b594ecdffc3057ff97f0cf2efca.png)
おわりに
袖ボタンの数は3つ、または、4つをよく目にしますが、1つや2つ、5つであっても、何らおかしくはありません。
アンフィニッシュド(購入後にボタンを取り付ける既製品)のスーツ・ジャケットを購入する際や、スーツ・ジャケットをオーダーする際に、袖ボタンの数にこだわってみるのも良いかもしれません。
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