はじめに
次の記事の続きです。

⑫ウィングチップ Wing-tip Oxford, Wing-tip Derby

ウィングチップは、上の写真のような一般的なウィングチップの他、ロングウィングブローグ(ウィングがかかとまで伸びているもの)、ブラインドブローグ(ウィングチップの仕様からメダリオンを省いたもの)、オースティリティブローグ Austerity Brogue(ウィングチップの仕様からメダリオンとパーフォレーションを省いたもの)と分類することができます。
日本においては、オースティリティブローグのことをブラインドブローグと呼ぶことがあるため、注意が必要です。

https://www.lakotahouse.com/journal/
2018/11/alden-n7507-scotch-grain-calf-long-wing-tip.html

https://www.medallionshoes.com/
product/vass-blind-brogue-oxford-hungary/

https://tradingpost.jp/nagoya/40063/
穴飾りは元々は水を逃すための穴であり、小川を渡ったり、湿地帯を横断したりするときに用いたスコットランドの靴にルーツがあると言われています。
外羽根になると、よりカントリー色が強くなります。

日本では、ウィングチップを冬物と誤って認識されていることがあります。
反対に、白のレザー、白のレザーとコンビ、スエード等起毛素材のウィングチップは伝統的に夏場に着用されてきました。
〈デザインとレザーの組み合わせの代表例とそれに適した場面、服装〉
黒スムース | 茶スムース | 起毛 | 白 | |
---|---|---|---|---|
Evening Dress | × | × | × | × |
Morning Dress | × | × | × | × |
Business Formal | × *1 | × *1 | × | × |
Suit(SS/AW) | × *2/○ | ○ | ○ | ○/× *3 |
Sport Coat(SS/AW) | × *2/○ | ○ | ○ | ○/× *3*4 |
*1 メダリオンがない場合、例外的に○。
*2 黒は重たい(重厚な)印象を与え、夏場には基本的に着用しない。
*3 白又は白のコンビ靴は、温暖な気候やスポーツと関連付けられ、冬場には基本的に着用しない。
*4 秋冬であっても、ホワイトトラウザースといったスポーツウェアと組み合わせることは可能。
Business Formal: ネイビー・ミディアムグレー・チャコールグレーで、
無地やシャドーストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ等柄が控えめな梳毛スーツ
Suit:Business Formal に該当しないスーツ全般。
SSは、主に、シアサッカー、サンクロス等の生地や、リネン、コットン等の素材を使った温暖な気候に合ったスポーティーなスーツ。
AWは、主に、フランネル、ツイード、コーデュロイ等の生地を使った寒冷な気候に合ったカントリーなスーツ。
Sport Coat:上下が共地でない、いわゆるジャケパンスタイル

黒のスムースレザーの内羽根ウィングチップを
合わせている。(1935.3 esquire)

茶のスムースレザーの内羽根ウィングチップを
合わせている。(1934.4 esquire)

茶のスムースレザーの内羽根フルブローグを
合わせている(左の紳士)。(1940.11 esquire)

茶のスムースレザーの
内羽根ウィングチップを
合わせている(右の紳士)。
ちなみに、左の紳士はゴム製の
内羽根ウィングチップを履いている。
(1940.11 esquire)

茶のスムースレザーの内羽根ロングウィングチップを
合わせている(左の紳士)。(1939.10 esquire)
メダリオンのある内羽根ウィングチップは、
スポーティーなスーツに最適。

茶のスムースレザーのウィングチップ(中央の紳士)。
(1934.1 esquire)

グレーフランネルトラウザースに、
茶のスムースレザーの内羽根ウィングチップを
合わせている(右の紳士)。(1939.9 esquire)
スポーツコートにもよく合う。

内羽根ウィングチップを
合わせている(左の紳士)。(1935.9 esquire)

(右の紳士)。(1936.9 esquire)

(1935.2 esquire)

茶のスムースレザーのメダリオンのない
内羽根ウィングチップを合わせている
(右の紳士)。(1934.4 esquire)
メダリオンがない場合、
ビジネスフォーマルであっても
合わせられる。

茶のスムースレザーの
メダリオンのない内羽根ウィングチップを
合わせている。(1940.9 esquire)

青とグレーのストライプのスーツに、
茶のスムースレザーの
メダリオンのない
内羽根ウィングチップを
合わせている。(1940.7 esquire)

茶のスムースレザーの
メダリオンのない内羽根ウィングチップを
合わせている。(1934.8 esquire)


茶のスムースレザーのメダリオンのない
内羽根ウィングチップを
合わせている(左の紳士)。(1938.10 esquire)

黒のスムースレザーのメダリオンのない
内羽根ウィングチップを
合わせている(右の紳士)。(1935.3 esquire)
メダリオンのないウィングチップであっても、
ウィングチップという意匠があくまでスポーティーなものと
いう位置づけであることが分かる。

黒のスムースレザーの
メダリオンのない内羽根ウィングチップを
合わせている(左の紳士)。(1934.3 esquire)

内羽根ウィングチップを合わせている。
内羽根オースティリティブローグに合わせる服装は、
スーツでなくても構わない。

(1937.5 esquire)

白と茶の内羽根ウィングチップを
合わせている。(1941.8 esquire)

外羽根ウィングチップを合わせている。
(1940.6 esquire)

茶のスムースレザーの
メダリオンのない
外羽根ウィングチップを
合わせている。(1934.4 esquire)
〈主な既成靴〉
Edward Green MALVERN, Church’s CHETWYND
⑬ノルウィージャン Norwegian

ノルウェーの漁師が閑散期に作っていた靴にルーツがあるとして、ノルウィージャン The Norwegian と呼ばれています。
日本では、Uチップと呼ばれることが多いシューズですが、海外では、Uチップというのは次のような靴を指します。

ノルウィージャンというと、U字の縫い目とトーにある縦の縫い目が特徴的です。
ここでは、J.M. WESTON Golf のようなトーに縫い目のない靴もノルウィージャンに含めます。
ノルウィージャンは、狩猟やゴルフに用いられてきたカントリーシューズです。
ビジネスフォーマルに着用しているのを時々見かけますが、カントリーシューズであることから、適していません。
〈デザインとレザーの組み合わせの代表例とそれに適した場面、服装〉
黒スムース | 茶スムース | 起毛 | 白 | |
---|---|---|---|---|
Evening Dress | × | × | × | × |
Morning Dress | × | × | × | × |
Business Formal | × | × | × | × |
Suit(SS/AW) | × *1/○ | ○ | ○ | ○/× *2 |
Sport Coat(SS/AW) | × *1/○ | ○ | ○ | ○/× *2*3 |
*1 黒は重たい(重厚な)印象を与え、夏場には基本的に着用しない。
*2 白又は白のコンビ靴は、温暖な気候やスポーツと関連付けられ、冬場には基本的に着用しない。
*3 秋冬であっても、ホワイトトラウザースといったスポーツウェアと組み合わせることは可能。
Business Formal: ネイビー・ミディアムグレー・チャコールグレーで、
無地やシャドーストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ等柄が控えめな梳毛スーツ
Suit:Business Formal に該当しないスーツ全般。
SSは、主に、シアサッカー、サンクロス等の生地や、リネン、コットン等の素材を使った温暖な気候に合ったスポーティーなスーツ。
AWは、主に、フランネル、ツイード、コーデュロイ等の生地を使った寒冷な気候に合ったカントリーなスーツ。
Sport Coat:上下が共地でない、いわゆるジャケパンスタイル

ノルウィージャンを合わせている(右の紳士)。
(1938.11 esquire)

ノルウィージャンを合わせている(中央の紳士)。
(1937.10 esquire)

黒のスムースレザーのノルウィージャンを
合わせている(中央の紳士)。(1937.9 esquire)

黒のスムースレザーの
ノルウィージャンを合わせている。
(1939.4 esquire)

黒のスムースレザーのノルウィージャンを
合わせている。(1938.3 esquire)
黒のスムースレザーもスポーツコートと
相性がいい。

茶のスムースレザーのノルウィージャンを合わせている
(左の紳士)。(1937.9 esquire)

茶のスムースレザーの
ノルウィージャンを合わせている
(左の紳士)。
(1936.10 esquire)

茶のスムースレザーのノルウィージャンを
合わせている(中央の紳士)。(1934.3 esquire)

茶のスムースレザーのノルウィージャンを
合わせている(右の紳士)。
(1937.5 esquire)

茶のスムースレザーの
ノルウィージャンを合わせている
(右の紳士)。(1940.5 esquire)

茶のスムースレザーのノルウィージャンを合わせている
(奥の紳士)。(1938.5 esquie)

グレーフランネルトラウザースに、
茶のスムースレザーのノルウィージャンを
合わせている(左の紳士)。
(1941.3 esquire)

茶のスムースレザーのノルウィージャンを合わせている。
(1934.8 esquire)

チョークストライプのグレーフランネルトラウザースに、
茶のスムースレザーのノルウィージャンを
合わせている(右の紳士)。(1937.5 esquire)

白と茶のノルウィージャンを
合わせている(右の紳士)。
(1936.7 esquire)

グレーフランネルトラウザースに、
白と茶のノルウィージャンを合わせている
(右の紳士)。 (1937.6 esquire)
〈主な既成靴〉
Edward Green DOVER, J.M. Weston The Golf derby 641, The half-hunt derby 598
③ウィングチップ・ノルウィージャン編は以上です。
次は④ローファー編です。

コメント
コメント一覧 (3件)
いつも拝見しております。
ジャケパンスタイルに外羽根ウイングチップ(トリッカーズ)を合わせるのはカジュアルすぎるでしょうか?また、外羽根ウイングチップに最も適したスタイルはどのようなものでしょうか?
ご教授いただけると幸いです。
追記です。申し訳ございません。
ビジネスでのジャケパンスタイルの場合です。
よろしくお願いいたします。
ユウキ様
フォローありがとうございます。
穴飾りのあるウィングチップはスポーティなもので、スポーティなスーツやスポーツコート(ジャケパンスタイル)に適しています。
外羽根の穴飾りのあるウィングチップに最適なスタイルという意味では、ツイードやコーデュロイでできたスーツやスポーツコートを
挙げることができます。
例えば、ツイードジャケット、オックスフォードシャツ、フランネルトラウザース、外羽根ウィングチップというような組み合わせです。
ビジネスといっても、スーツの延長で梳毛のセパレートをジャケパンスタイルとして推奨する職場もあれば、
ジャケットすら着なくてよい自由なジャケパンスタイルが許容される職場もあり、程度に差がありますので職場の規程や慣習にはご留意ください。
装ひ研究所 管理人