クレリックシャツの着こなし

５年ほど前だったか、「英国回帰」、「英国調」という流れの中で、クレリックシャツはよく打ち出されていたように記憶しています。
しかし、ここ数年は、ビジネスシーンや街中でクレリックシャツを見かけることが少なくなりました。

クレリックシャツのもつクラシカルな雰囲気は、スーツスタイルを格上げするもので、ビジネスシーンや畏まった場に適したものです。

今回は、クレリックシャツの着こなしについて解説したいと思います。

クレリックシャツは、かつて一般的であった取り外し式の襟にその起源があるといわれています。

取り外し式の襟は、1827年にニューヨーク州トロイのハンナ・モンタギュー Hannah Montague という夫人が考案したとされています。

モンタギュー夫人は、洗濯を行い、乾いたシャツにアイロンをかけ、仕上げに襟を糊付けする必要がありました。
当時、硬く糊付けされた白い襟は、頭脳労働を行うホワイトカラーのステータスシンボルだったからです。

ゴム手袋や電気アイロンのない時代に、素手でこすり洗いをして汚れを落とすことや、重い炭火アイロンでアイロンをかけることは重労働でした。
少しでもその負担を軽減しようと、モンタギュー夫人は、襟を取り外し式にして、汚れやすい襟だけ洗うことを思いつきました。

クレリックシャツに適した服装

白い襟は、カラーシャツのドレス度合いを高めます。
クレリックシャツは、Morning Dress からスーツに合わせることができます。
※身頃のシャツ地の色柄によってはスポーツコートに合わせることもあります。

ボタンダウンは避ける

前述のとおり、クレリックシャツは、基本的にスポーツコート（ジャケパンスタイル）に合わせないようなドレス度合いの高いものです。
一方、ボタンダウンカラーは、襟型の中ではスポーティなものであり、ドレス度合いの高いクレリックシャツとは合いません。
ボタンダウンカラーのクレリックシャツは古典的な価値観に照らすと奇異なものです。

取り外し式の襟が流通していた当時は、拝み合わせのカフス（e.g. French cuffs ）でない場合も、スタッズ Studs やカフホルダー Cuff holders を使って留めており、今日のように糸で取り付けられた貝ボタンを使っていませんでした。

したがって、クレリックシャツの場合、ボタン留めではなく、カフリンクスを使ってください。

フレンチカフスは手首の太さに応じて調整できないため、既製品ではバレルカフ（ボタンとボタンホールで留めるシングルカフ）のクレリックシャツが売られていることがありますが、オーセンティックな装いをしようとする人は避けてください。

While the matching French cuff is always acceptable, a button cuff has no place at the end of a sleeve attached to a shirt with a contrasting white collar.
フレンチカフスのマッチングは常に許容されますが、ボタンカフスは、クレリックシャツの袖に位置するものではありません。

Alan Flusser, Dressing the Man, New York: Harper Collins Publishers, 2002, p.139

カフスは白？シャツの身頃と同じ？

クレリックシャツには、カフスが襟と同様に白のものと、カフスがシャツの身頃と同じものと２通り存在しますが、どちらでも構いません。

おわりに

今回は、クレリックシャツについて、歴史や合わせることができる服装、クレリックシャツを選ぶときの留意点を解説しました。

クレリックシャツは、ドレス度合いが高く、基本的にMorning Dress からスーツまで合わせられるものです。
※身頃のシャツ地の色柄によってはスポーツコートに合わせることもあります。

クレリックシャツを選ぶときの留意点は次のとおりです。

• ボタンダウンカラーのクレリックシャツは避ける。
• カフリンクスで留められるカフスのついたシャツを選ぶ。
• 襟と同じ白いカフス、あるいは、身頃と同じ生地を使ったカフスのいずれでも構わない。