バラクータ バルマカーンコート G8

目次

はじめに

前回の続きです。

今回は、ローズタータンを使ったバルマカーンコートG8をご紹介したいと思います。

素材とディティール

表地の素材はコットンツイル

以前ご紹介したバルマカーンコートG7と比較しながら、ディテールをご紹介したいと思います。

G8は、G7と同様に、綿100%です。(裏地は Viscose 100%です。)
しかし、G7はポプリンでしたが、G8はツイルとなっており、より地厚な生地です。

ポケットは貫通していない・カラーにボタンホール

過去の記事で、次のようなバルマカーンコートの主なディテールを解説しました。

  1. コンバーチブルカラー convertible collar :首元のボタンを閉じても開いても着用できる襟。
  2. ラグランショルダー(ラグランスリーブ) raglan shoulders / raglan sleeve :首元から袖がつけられ、肩と袖が一体となった仕立て。ケープに袖をつける形で成立したバルマカーンコートにとって、ラグランショルダーとなるのは必然とも言える。
  3. 貫通ポケット through pockets :身頃に切れ目があり、コートのボタンを外さずに、パンツのポケットに入っているものを取り出すことができる。
  4. 袖のタブ tab on sleeve :袖先にボタンが2つあり、袖口を狭めて雨の浸入を防ぐことができる。現在ではその機能は形骸化し、ボタンが1つであることも少なくない。
  5. 比翼仕立て fly front :前立てを二重にし、ボタンを留めたときにボタンが見えなくなる仕立て。正面からの雨や風の侵入を防ぐことができる。

このうち、貫通ポケットはG8では採用されておらず、計4つのポケットとなっています。

G8
G7は貫通ポケット

また、カラーにはボタンホールが開けてあり、ボタンを留めて、風を通しにくくすることができます。

G8
G7のカラーにはボタンホールはない。

アンブレラヨークはない

G8は、G7と異なり、アンブレラヨークがなく、至ってシンプルな後ろ姿です。

G8
G7

裏地はローズタータンで、流し込み

裏地は前回ご紹介したローズタータンです。

このバルマカーンコートに使われているローズタータンは、Rose Hunting といい、狩りをする際に、着用者がハイランドの森に溶け込むのに役立つよう、より暗く、より自然な色で構成されています。

ハンティング用に考案されたともいわれるバルマカーンコートには、まさにぴったりの裏地だと思います。

Balmacaan Background
Shooting birds from a box in the Scottish moors called for more than 100proof protection from the elements. Even full-flowing capes didn’t stop blasts of wind and rain from the body. So sleeves were added to cape and the raglan-shouldered balmacaan was born.
スコットランドの荒野で鳥を撃つには、強風雨から身を守る十分な防寒具が必要だった。全身を覆うようなケープでさえ、体に吹き付ける風雨を防ぐことはできなかった。そこで、ケープに袖をつけ、ラグランショルダーのバルマカーンが誕生した。

esquire 1948.3

Rose Tartan のように、ハンティング用のタータンは、通常、緑や茶を基調とした色で構成されています。
これを知っておくと、例えば、オーダーメイドでバルマカーンコートをつくる際に、緑や茶を基調としたチェック柄を裏地に用いると、歴史的背景を踏まえたオーバーコートを誂えることができます。
既製品でもそのような裏地のオーバーコートが見つかれば、それを購入するのもよいと思います。

Fraser Hunting
赤を基調としたフレイザータータンの
別のバリエーションとして、
緑っぽい茶を基調としたクラン・タータンも
存在する。
https://www.tartanregister.gov.uk/
tartanDetails?ref=1258

裏地の裾の処理については、G8は流し込みといって、裏地の裾を表地と張り合わせた仕立てとなっています。
一方、G7はふらし(裏地の裾を表地と張り合わさない仕立て)でした。
ふらしは、表地と裏地の縮率の差によって片方の生地がもう片方の生地によって引っ張られ、シルエットが崩れてしまうことを防ぐ効果があります。
G8はふらしではありませんが、裏地に若干の余裕をとり、シルエットが崩れるのを防いでいます。

G8
G7はふらし

サイズ、シルエット

G8もG7と同じ38サイズですが、サイズ感は随分異なります。
G8は、全体的にゆとりのあるサイズ感です。
袖丈は短かったため、出しています。
(年代物のコートの袖が短いのは、古着好きな人にはあるあるかと思います。また、袖丈調整の際にステッチを追加しています。)

身幅着丈
G8 Rose Hungting60cm101cm
G7 Fraser56.5cm97cm

G7はややAラインあるいは直線的なシルエットといえますが、G8はAラインのシルエットとなっています。

また、G8にはベルトはありません。

おわりに

今回は、バルマカーンコートG8をご紹介しました。
以下は、G7との比較です。

G8G7
生地コットンツイルコットンポプリン
貫通ポケットなしあり
カラーのボタンホールありなし
アンブレラヨークなしあり
裏地Rose HuntingFraser
裏地の裾の処理流し込みふらし
身幅60cm56.5cm
着丈101cm97cm
シルエットAラインややAラインあるいは直線
ベルトなしあり

G8はより厚手で秋冬に向いており、G7は春先に最適です。
都内であれば、ウールのニットとツイードのスポーツコートの上にG8を羽織れば、冬場を乗り切れるのではないでしょうか。

また、サイズ表記は同じでもモデルによってサイズ感が大きく異なり、購入の際は試着するのが望ましいと思います。
古いコートは袖丈が短いことがあるという点からもそのように思います。

今回は以上になります。
コメント、リクエストがあればお気軽にどうぞ。
いくつかコメントをいただいておりますが、回答できるものについて順番に回答していくつもりですのでお待ちください。
ではまた次の機会に。

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