バルマカーンコート(ステンカラーコート)

目次

はじめに

日中は暖かく、夜には肌寒さを感じるという季節の変わり目に活躍するのが綿のバルマカーンコート(ステンカラーコート)です。

バルマカーンコートは、スポーティなスーツやスポーツコート(ジャケパンスタイル)を中心に、綿製のものはレインコートとしてビジネスフォーマルスタイルまで幅広く合わせられてきました。
カジュアル化が進み、カジュアルとビジネスの垣根がなくなりつつある現代において、今後活躍の機会が増えるコートではないでしょうか。

今回は、バルマカーンコートについてご紹介したいと思います。

バルマカーンコートとは

バルマカーンコートは、雨風をしのぐ防寒着として生まれ、スコットランドのインバネス近郊の Balmacaan Estate にちなんで名付けられたと言われています。
ツイードといったウールでできたものや、綿でできたものがあり、後者は単にレインコートやスリップオンと呼ばれることもあります。

Balmacaan Background
Shooting birds from a box in the Scottish moors called for more than 100proof protection from the elements. Even full-flowing capes didn’t stop blasts of wind and rain from the body. So sleeves were added to cape and the raglan-shouldered balmacaan was born.
スコットランドの荒野で鳥を撃つには、強風雨から身を守る十分な防寒具が必要だった。全身を覆うようなケープでさえ、体に吹き付ける風雨を防ぐことはできなかった。そこで、ケープに袖をつけ、ラグランショルダーのバルマカーンが誕生した。

1948.3 esquire
esquire 1948.3

BALMACAAN: A loose-fitting coat based on the original military version worn by the Prussian Army. Named for Balmacaan, an estate near Inverness, Scotland, it features raglan shoulders and a narrow, turned-down collar; both collar and coat are called “bal” for short.
バルマカーン:プロイセン軍が着用した軍用コートを原型とするゆったりとしたコート。スコットランドのインバネス近郊にあるエステートにちなんで名付けられた。ラグランショルダーと細く折り返した襟が特徴で、襟もコートも略して「バル」と呼ばれる。

Alan Flusser, Dressing the Man, New York: Harper Collins Publishers, 2002, p.277

主な特徴

バルマカーンコートには次のような特徴的なディテールがあります。

  1. コンバーチブルカラー convertible collar :首元のボタンを閉じても開いても着用できる襟。
  2. ラグランショルダー(ラグランスリーブ) raglan shoulders / raglan sleeve :首元から袖がつけられ、肩と袖が一体となった仕立て。ケープに袖をつける形で成立したバルマカーンコートにとって、ラグランショルダーとなるのは必然とも言える。
  3. 貫通ポケット through pockets :身頃に切れ目があり、コートのボタンを外さずに、パンツのポケットに入っているものを取り出すことができる。
  4. 袖のタブ tab on sleeve :袖先にボタンが2つあり、袖口を狭めて雨の浸入を防ぐことができる。現在ではその機能は形骸化し、ボタンが1つであることも少なくない。
  5. 比翼仕立て fly front :前立てを二重にし、ボタンを留めたときにボタンが見えなくなる仕立て。正面からの雨や風の侵入を防ぐことができる。

1.コンバーチブルカラー

2.ラグランショルダー(ラグランスリーブ)

3.貫通ポケット

4.袖のタブ

5.比翼仕立て

どう合わせるか?

バルマカーンコートの出自に従ってカントリーな装いにはとても似合います。

袖口を絞ることによって強調されるゆとりから、
優雅な雰囲気を醸し出している
(中央の紳士)。(1933.9 esquire)






綿製のバルマカーンコートはレインウェアとしての役割も果たし、ビジネスフォーマルなスーツに合わせることもできます。

グレーのウーステッドスーツに、
バルマカーンコートを合わせている。
コートの裾から覗くチェック柄が洒落ている
(中央の紳士)。
腕を曲げたときに、十分な長さのあるシャツの袖が
コートの袖口から覗く一方、
ジャケットの袖はコートの袖口から覗いていないという
完璧なサイズ感にも注目してほしい。
(1946.3 esquire)






もちろんスーツでなくても、バルマカーンコートを羽織ることができます。

1934.3 esquire
1943.3 esquire






雨の日にボタンを上まで留めて着るのも良いですね。

雨の日に、襟を立て、ボタンを留めて着るのも
かっこいい(右の紳士)。(1947.4 esquire)






ボタンを留めずに、ガバッと羽織るのはスティーブ・マックイーン氏 Steve McQueen やケーリー・グラント氏 Cary Grant ら往年の名優を連想させます。

Steve McQueen
Cary Grant



晴れの日にはボタンを留めずに羽織るのが最も見栄えがします。
ボタンを留めずに羽織ることで、裏地が映え、オーセンティックな雰囲気が出ます。
やはり綿のバルマカーンコートであれば、裏地にこだわりたいところです。

1939.9 esquire
1943.2 esquire

おわりに

今回はバルマカーンコートをご紹介しました。

ウールのバルマカーンコートは冬に、綿のバルマカーンコートは春あるいは秋に、最適なコートです。
取り外し可能な裏地をそなえた3シーズンに対応する綿のバルマカーンコートもあります。

スポーティなスーツやスポーツコートを中心に、綿のバルマカーンコートはレインウェアとしてビジネスフォーマルスタイルにも合わせることができます。

着回ししやすいコートを1着選ぶなら、バルマカーンコートではないでしょうか。

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