タートルネックの着こなし

目次

はじめに

「 フランス政府、国をあげての“タートルネック推し”が話題「ヨーロッパ版の“ウォーム・ビズ”になるのでは」 」というニュースが流れていました。

https://times.abema.tv/articles/-/10043594

要約すると、ロシアのウクライナ侵攻を含むエネルギー危機に際し、暖房費の節約のためにビジネスシーンでもタートルネックを着ようというフランス政府の呼びかけがあったとのことです。

シャツのようにアイロンをかける必要もなく、手間のかからないことや、ゴルフ場のドレスコードにおいてネック部分が襟と同様と見なされるように、カジュアルになりすぎないことはタートルネックのよい点だと思います。
ただし、古典的な装いにおいては、タートルネックは何にでも合わせられるわけではありません。
今回は、タートルネックの着こなしを解説したいと思います。

タートルネックの歴史

タートルネックの歴史は中世にさかのぼり、当時の防具である鎖帷子の粗くて重い金属から首と胴体を保護するよう、鎖帷子の下に身につけた衣類に由来すると主張する人もいます。

https://www.metmuseum.org/art/collection/search/702478

諸説ありますが、現在のタートルネックの直接のルーツは、第一次世界大戦中のイギリス海軍向けのセーターに求めることができます。

https://www.cabourn.com/en-jp/blogs/journal/in-depth-submariner-sweaters-and-roll-neck-knits

Although these high-collared knits existed in various forms throughout the early 20th century, made with varying patterns and shapes, it was only really during the First World War that these disparate styles morphed into the jumper we know today, when the British War Office ordered thousands of heavyweight roll-neck wool sweaters to be made for the Royal Navy.

Sailors needed something to wear under their jackets whilst battling with harsh conditions out at sea, and these new jumpers fit the bill perfectly. That high neck stuck well out above the collar of a duffle coat, keeping necks toasty whilst on deck, and that soft wool added a slight element of comfort to the tight cabins and corridors not exactly built with luxury in mind.

20世紀初頭、襟の高いニットは様々な形で存在し、柄や形も様々でしたが、第一次世界大戦中、英国陸軍省が英国海軍のために数千枚のヘビーウェイト・ロールネック・ウール・セーターを発注したことから、様々な柄や形で存在した襟の高いニットが今日のセーターに姿を変えたのでした。

船乗りたちは、海上での過酷な状況下でジャケットの下に着るものを必要としており、この新しいセーターはその要求に完璧に応えたのです。ネックの部分はダッフルコートの襟から大きく出ており、甲板上でも首元を暖かく保つことができ、柔らかいウールは決して豪華とは言えない狭い船室や廊下にわずかな快適さをプラスしてくれました。

“In Depth: Submariner Sweaters and Roll Neck Knits”, Nigel Cabourn,
https://www.cabourn.com/en-jp/blogs/journal/in-depth-submariner-sweaters-and-roll-neck-knits
潜水艦 HMS Affray にて
https://blog.eastmanleather.com/view-post/the-silent-service

その後、タートルネックのもつ実用性から、スキー、フィッシング、シューティング等スポーツウェアに取り入れられていきました。

1935.2 esquire
右の紳士(1936.4 esquire)
右の紳士(1934.11 esquire)

タートルネックはスーツにも合わせられる

よく見かけるのはスポーツコート(ジャケパンスタイル)にタートルネックを合わせる着こなしです。
タートルネックはスポーティなアイテムであり、スポーツコートに相性がよいです。

ハウンドトゥースのジャケット、
グレーフランネルトラウザースに、
ネイビーのタートルネックを合わせている(右の紳士)。
シェパードチェックのキャップ、
茶の外羽根プレーントー。
胸ポケットから懐中時計用のストラップ
(the breast pocket watch guard strap)が覗く。
色を拾っていない赤のポケットチーフが素敵。
(1935.10 esquire)
チャック柄のツイードジャケット、
グレーフランネルトラウザースに、
ネイビーのタートルネックを合わせている。
タートルネックの色がチェック柄のネイビーブルーを
拾っているところが素晴らしい。
チェック柄のツイードキャップ、ウールホーズ、
茶のスエードの外羽根プレーントー。
(1935.3 esquire)

一方、スーツにタートルネックを合わせる着こなしもオーセンティックな着こなしです。
ただし、タートルネックはスポーティなアイテムであり、同じくスポーティなスーツ(e.g. チェック柄のスーツ、紡毛のスーツ等)に合わせるということに留意してください。

青灰色の千鳥格子のツイードスーツに
ネイビーのタートルネックを合わせている(左の紳士)。
ネイビーのウールホーズ、
白黒のミトン。(1936.1 esquire)
チェック柄のチェビオットスーツにタートルネックを
合わせている(右の紳士)。
胸にはダークなポケットチーフ。
ノルウィージャンシューズも含め、
オーセンティックなカントリースタイルという装い。
(1936.3 esquire)

タートルネックをどう合わせるか?

タートルネックはシャツの代わりでもあり、ネクタイの代わりでもあります。
経験則では、ネクタイ感覚でタートルネックの色を選んだ方がうまくまとまります。
例えば、グレーのジャケットにネイビーやグリーンのタートルネック、ネイビーのジャケットに、グレーやワインのタートルネックを合わせるという具合です。
個人的には、タートルネックの色に差し色となるようなグリーンやワインを使うことが好きです。

グレーフランネルジャケットとグリーンのタートルネック。
スポーツコート又はスーツに。
ネイビーブレザーにワインのタートルネック。

おわりに

今回は、タートルネックの着こなしを解説しました。

タートルネックはスーツとスポーツコート(ジャケパンスタイル)の両方に合わせることができるアイテムです。
ただし、スーツに合わせる際には、ビジネスフォーマル(ネイビー・ミディアムグレー・チャコールグレーで、無地やシャドーストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ等柄が控えめな梳毛スーツ)に合わせることは避けてください。

タートルネックは、上品でありながら、リラックスした雰囲気をつくり出すことができ、 大人の休日スタイルにはぴったりなアイテムです。

今回は以上になります。
コメント、リクエストがあればお気軽にどうぞ。
ではまた次の機会に。

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コメント

コメント一覧 (4件)

  • 管理人さま

    いつも楽しく拝読させていただいております。
    コメント失礼いたします。

    タートルネックは重宝するアイテムだと思いますが、
    私の場合は、ウール特有のチクチク感が若干苦手で、
    冬場のニット着用時にはコットンシャツにクルーネックを重ねる着こなしの方が多いです。

    そこで2つほどいつも気になっていることはありますが、
    質問させていただいてもよろしいでしょうか。

    ひとつめは、タートルネックとクルーネックの中間くらいの
    モックネックですが、このアイテムにつきましては、どうお考えでしょうか。
    ここ数年くらいで見かけるようになった気がするのですが…。

    また、ニットを着る際には、直接肌に触れないような着こなしを心がけておりますが、
    これからの春夏にかけては、暑さでコットンやリネンのニットを襟なしのTシャツや
    カットソーの上に着ることがありますが、このような着こなしをいかがお考えでしょうか。
    やはり、襟ありのポロシャツなどの上から着るべきなのでしょうか。

    今回も神経質な質問で恐縮ですが、管理人さまのお考えをお聞かせいただけたら幸いでございます。

    どうぞよろしくお願いいたします。

    • kWc様

      いつもフォローありがとうございます。
      以下、ご質問にお答えします。

      〈1つ目のご質問について〉
      モックネックはおっしゃるように、ここ数年よく販売されていました。
      冬場は乾燥もあり、肌触りを気にされる方が多いですが、下着を着用すれば地肌に触れるのはシャツの台襟程度の編地のみであることや、編地が顎に触れないといった着用感の良さから、そのような方にも好評であったようです。

      モックネックは海外では mock turtle, mock turtle neck 等と呼ばれ、タートルネックの一種といえます。
      タートルネック、モックネックいずれもスポーティなもので、その他のアイテムとの組み合わせを考える上では特に差はありませんが、例えば、関東の名門ゴルフ場では、プレー中の服装に関してタートルネック可・モックネック不可としているところもあり、TPOには留意する必要があります。

      選ぶ際の留意点としては、タートルネック、モックネックいずれも首に沿うものが望ましく、試着はマストと考えます。(余分な隙間はシャツ同様だらしなく見えます。モックネックは隙間がわかりやすく、タートルネックよりもサイズがシビアです。)
      モックネックの首の編地の高さはメーカー・ブランドによって様々であり、経験則では、スポーツコートに合わせることを考えると、低すぎないもの、ある程度高さのあるものが望ましいです。

      〈2つ目のご質問について〉
      当サイトで解説しているようなメンズドレススタイルでは、Vネックやカーディガン等から覗くことも含め、基本的に見えるようにTシャツを着用することはありません。
      (※Tシャツが露出しなければよいので、例えば、タートルネックの下に下着としてTシャツを着用するのは問題ありません。)
      (※古くはバスクシャツといった襟のないものが単体で着用されることもありましたが、詳しい解説は割愛します。)
      (※カジュアルスタイルでは、Tシャツとカーディガンといった組み合わせがありますが、カジュアルな装いは当サイトでは解説の範囲としておりません。)

      装ひ研究所 管理人

      • 管理人さま

        ご回答いただきありがとうございます。

        モックネックについて、詳しいご説明ありがとうございます。
        モックネックがタートルネックの一部との認識はありませんでしたし、
        選ぶ際のポイントもご教示いただき大変参考になりました。

        2つめの質問については、こちらの質問内容が言葉足らずで失礼しました。
        当然ながら、わたくしもカジュアルシーン以外でTシャツを露出するような着こなしはいたしません。
        お尋ねしたかったのは、クルーネックのニットを着る場合(Tシャツ等のインナーが露出していない状態)もタートルネック同様の着こなしが可能かどうかという点でした。

        タートルネックの着用時に下に襟付きのコットンシャツを着て、襟もとからシャツの先端を出している着こなしをされているかたをを何度か見たこともあり、さすがにこれは不自然だと感じましたが、
        クルーネックのニットの場合では襟付きのシャツを重ねるのが本来のルールなのかと疑問を感じ質問させていただいた次第でした。
        こちらのサイトの趣旨とは違った質問で失礼しました。

        次回の更新も楽しみにしております。

        • kWc様

          ご返信ありがとうございます。

          〈1つ目のご質問について〉
          お役に立てたのであれば幸いです。

          〈2つ目のご質問について〉
          趣旨理解しました。ご質問は当サイトの解説範囲です。
          実は他のフォロワー様から、コメントではなくお問い合わせ(メール)にて、セーターを着用する際にシャツの襟は出すか出さないか、ネクタイは締めたほうがよいか等のご質問をいただいております。
          セーターの正しい着方について記事を執筆する予定であり、まだ内容は確定していませんが、その中で解説するかもしれません。
          引き続きフォローいただければ幸いです。

          装ひ研究所 管理人

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