はじめに
この数十年の間に、スーツあるいはスポーツコートにネクタイを合わせない装いが、珍しいものではなくなりました。
そこで着用されているシャツに目を向けてみると、その多くがボタンダウンシャツであることに気づきます。
では、ノーネクタイで上着を着用する際に適した布帛のシャツは、ボタンダウンシャツ以外にないのでしょうか。
そもそもボタンダウンシャツとは、ノーネクタイを前提としたシャツなのでしょうか。
そこで今回は、これらの疑問について整理してみたいと思います。
古典的装いの前提
古典的な装いにおいて、布帛のシャツは元来、下着として位置づけられ、単体での着用は想定されず、スーツコート・スポーツコートやウエストコートの下に着用することを前提とした衣服でした。
その際には、布帛のシャツに上着を着用し、ネクタイも含めて一揃いと考えられていました。
布帛のシャツにネクタイを合わせること自体が装いの前提だったため、ネクタイは仕事に限らず、日常のさまざまな場面で自然に締められていたのです。

スキースーツ、ギンガムチェックのシャツ、
黄色のネクタイ、黄色のアンクレットと黄色のウール手袋、
ネイビーのウールのストッキング、
ネイビーのニットのヘッドバンド、
、スキーブーツ(1936.2 esquire)
Those who are too young to remember should look at the movies and photographs of games at Yankee Stadium in DiMaggio’s day. The men wore white shirts and ties under coats and hats, the proper attire in public, even at a ball game.
Donald Kagan, “Joe DiMaggio, Baseball’s Aristocrat,” Washington Examiner, March 22, 1999.
当時を知らない若者は、ディマジオの時代のヤンキースタジアムでの試合を映した映画や写真を見るとよい。男性たちは白いシャツにネクタイを締め、上着と帽子を身に着けて観戦していた。野球観戦のような場であっても、それが公共の場における正しい装いだったのである。
ノーネクタイが許容される布帛のシャツとは
前述のように、一般的な布帛のシャツは、古典的には上着とネクタイを含めて一揃いと考えられてきました。
では、そのような前提のもとで、ネクタイを省くことができる布帛のシャツは存在しなかったのでしょうか。

ネクタイを締めたボタンダウンシャツ
(写真中、一番右のシャツ)
この問いに対する答えとして、ボタンダウンシャツを挙げる方もいらっしゃるでしょう。
確かに今日では、ボタンダウンシャツはノーネクタイの代表例のように語られることも少なくありません。
しかし、これはあくまでネクタイ着用を前提としたシャツであり、ノーネクタイが許容されるようになったのは、後年の慣習の変化による結果にすぎません。
一方で、ネクタイの着用を前提としないシャツも存在します。
それが開襟シャツです。
開襟シャツは、ノーネクタイで上着に合わせて着用することができます。
ただし、「開襟シャツの着こなし」でご説明したように、古典的な観点では開襟シャツをビジネスフォーマル*に合わせることはありません。
*ビジネスフォーマル:ネイビー・ミディアムグレー・チャコールグレーで、無地やシャドーストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ等柄が控えめな梳毛スーツ。

次項から、開襟シャツをこれから購入する方の指針となるよう、開襟シャツに適した生地と、基本ディテールを解説したいと思います。

開襟シャツの選び方
生地
冬を除くシーズンでの着用を想定すると、素材は薄手の綿やリネン等が望ましいでしょう。
柄については、無地はもちろん、ストライプやチェック、半袖であれば下図のような柄物も選択肢に入ります。

(1941.1 esquire)

https://www.terracesmenswear.co.uk/products/
73398?srsltid=AfmBOoo5WfU1UkZkXvMlW8OQa
_WD9taq7mAVw0D9YJZZ_NV520MosTUn


色については、ドレスシャツの延長線上で淡色を選ぶのも、あるいはポロシャツ感覚で濃色を選ぶのも、いずれもよい選択肢です。

リネンジャケット、
ネイビーシャツ、
グレーフランネルトラウザース、
ホワイトバックス
(1937 Apparel Arts)
ディテール
開襟シャツのディテールは次の4点がポイントです。
➀ 半袖か長袖か
➁ 首元まで留められる仕様か否か
③ 胸ポケットの有無
④ 裾の処理
一つ一つ解説したいと思います。
➀ 半袖か長袖か
開襟シャツのディテールとしては、半袖・長袖のいずれを選んでも問題ありません。
ただし、今回のように上着の下に着用することを前提にすると、上着の袖に直接素肌が触れない長袖を選ぶことをおすすめします。
➁ 首元まで留められる仕様か否か
ループあるいはボタンホールによって首元まで留められる仕様であっても、そうでなくても、いずれでも問題ありません。
今回はノーネクタイを題材にしておりますが、首元まで留められる仕様であれば、ネクタイをすることも可能であり、長袖の場合はそのような仕様も便利に感じられるでしょう。

③ 胸ポケットの有無
元来、ドレスシャツは下着と位置づけられ胸ポケットが付くことがありませんが、開襟シャツは上着なしで単体で着用することもでき、胸ポケットを付けるのも自然な選択肢です。
ご参考までに、筆者は素肌にシャツを着用するため、淡色・薄手の生地であれば、左右に胸ポケットをつけます。
④ 裾の処理

3インチ(約7.6cm)のスリット入り。
赤いビーチスラックス、黄色のアッパーに
赤いラバーソール。
(左の紳士)(1936.7 esquire)
ドレスシャツとは異なり、裾を出しても入れても着用できるよう、裾は水平カットでスリット入りのデザインが望ましいです。

https://www.brooksbrothers.com/
irish-linen-camp-collar-short-sleeve-sport-shirt/
MG04166.html?srsltid=AfmBOopeFbyJ7x3I9sGZFis1
WOgFFl6bu9l7hZxxDXRh4G_k5ofn0nU5

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おわりに
今回は、上着を着用してノーネクタイが許容される布帛のシャツとして、開襟シャツをご紹介しました。
開襟シャツに適した生地と、基本ディテールは次のとおりです。
- 素材:冬を除くシーズンであれば、薄手の綿やリネン等
- 柄:無地、ストライプ、チェック、その他プリント柄
- 色:淡色、濃色
- 袖の仕様:上着の下に着用する場合は長袖を推奨
- コンバーチブル仕様の選択:着用者の好みに応じて決定
- 胸ポケットの有無:同上
- 裾の処理:水平カット、スリットつき
開襟シャツは古典的な装いにおいて、ノーネクタイの代表的な選択肢です。
もし、ラペルの上に襟を出すスタイルに気恥ずかしさを感じる場合は、襟を内側に収めてもよいでしょう。
そうすると、すっきりと現代的な印象になり、街でも自然に着こなせます。
ぜひ一度、試してみてはいかがでしょうか。

今回は以上になります。
コメント、リクエストがあればお気軽にどうぞ。
ではまた次の機会に。

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