マドラスチェックのネクタイ、シャツ

目次

はじめに

今回は、夏に向けてマドラスを解説したいと思います。

マドラスとは

マドラスは生地の名称

1866年頃のマドラス(Dr. Bhau Daji Lad Museum 貯蔵)
https://mapacademy.io/article/madras-checks/

マドラスとは、先染めの糸によってチェックや格子、ストライプの柄を表現した、平織の綿あるいは綿混紡の生地を指します。
当初、これらの柄は天然染料で染色した糸を用いて手織りしていたため、洗濯によるにじみや褪色が特徴でした。
現在は、クレームにならないよう、にじみや褪色を抑えられた生地がほとんどですが、それら本来の風合いを模した柔らかく淡い色調が魅力となっています。
定義のポイントは次のとおりです。

  • チェック柄が代表的だが、チェック柄だけではない。
  • 柄は織りで表現されており、プリントではない。
  • 色彩豊かな生地だが、にじみ、色褪せたような風合いでビビット(鮮やかで冴えた色)ではない。
1937 apparel arts


比較的薄手の生地であることから、ネクタイやシャツ、ショーツ等に用いられます。

チェンナイの位置


マドラスという名称は、主な産地のインド南東部のマドラス(現在のチェンナイ)に由来しています。

Indian madras refers to a brightly colored, lightweight, breathable, handwoven cotton fabric that is yarn-dyed in checks, plaid, or stripes, which originated in Chennai (formerly called Madras), a city in South India.
インディアンマドラスとは、先染めの糸を使ってチェックや格子、ストライプの柄を表現した、色鮮やかで軽量、通気性に優れた手織りの綿織物のことで、南インドの都市チェンナイ(旧称マドラス)が発祥の地である。

Anette Lynch, Mitchell D. Strauss, Ethnic Dress in the United States: A Cultural Encyclopedia, Lanham: Rowman & Littlefield, 2014, p.189

madras Plain-weave cotton or blended material in stripes or checks; used for shirts, underwear, and sportswear. It is named for Madras, an early source of textiles.
ストライプやチェックの平織りコットンまたは混紡素材で、シャツ、アンダーウェア、スポーツウェアに使用される。初期の織物産地であるマドラスにちなんで名づけられた。

O.E. Schoeffler, William Gale, Esquire’s encyclopedia of 20th century men’s fashions, New York: McGraw-Hill, 1973, p.667

MADRAS: Plain weave cotton or blended material for strongly colored stripes, checks, and plaids: used for shirts and sportswear. It is named for Madras, India, an early source of such textiles. (See “Summer” in the “Shirt Fabrics” gatefold.)
マドラス: 平織りのコットンまたは混紡素材で、強い色調のストライプ、チェック、格子柄があり、シャツやスポーツウェアに使用される。マドラスという名前は、初期の産地であったインドのマドラスにちなむ。(「シャツ生地」の「夏」を参照)。

Alan Flusser, Dressing the Man, New York: Harper Collins Publishers, 2002, p.293

マドラスはアイビー、プレッピーブームの前から定番品

マドラスというと、アイビーやプレッピーのマストアイテムと認識されている方も多いと思います。
しかし、マドラスは、戦後のアイビー、プレッピーの流行りものではなく、1930年代にはカリブ海のリゾート地で休暇を過ごすアメリカ人観光客の間で人気を博し、世界恐慌の時代に旅する余裕のある富裕層のステータスシンボルと見なされていました。

Lightweight India madras fabric was another popular Caribbean fashion import in the late thirties, being used in sports shirts, swim shorts, and walk shorts. The bright colors ran, but they were supposed to, and so that did not dampen the well-dressed man’s penchant for this “guaranteed to bleed” fabric. The actual fashions, however, were made up by West Indian natives.
薄手のインド製マドラス生地もまた、30年代後半にカリビアンファッションの舶来品として人気があり、スポーツシャツやスイムショーツ、ショーツに用いられていた。鮮やかな色はにじんでしまうが、それは想定内であり、それによってウェルドレッサーたちがマドラス生地を敬遠することはなかった。生地はインド製だが、これらの衣類はカリブ諸島の原住民によってつくられたものだった。

O.E. Schoeffler, William Gale, Esquire’s encyclopedia of 20th century men’s fashions, New York: McGraw-Hill, 1973, p.83

マドラスの着こなし例

次に、マドラスのネクタイとマドラスのシャツについて着こなしをご紹介したいと思います。

マドラスタイ

マドラスタイは、伝統的に春夏の暖かい気候に着用され、春夏の代表的なネクタイです。
通常のフォーマルウェアやビジネスフォーマル*を除く、スポーティなスーツやスポーツコートに合わせることができます。
*ビジネスフォーマル:ネイビー・ミディアムグレー・チャコールグレーで、無地やシャドーストライプ、ピンストライプ、ペンシルストライプ等柄が控えめな梳毛スーツ。

ストローハット、オックスフォードシャツ、マドラスタイ、
フーラードポケットチーフ、スペクテイターシューズ、
(右の紳士)。(1938.7 esquire)
パナマハット、トロピカル梳毛スーツ、
緑がかったオックスフォードボタンダウンシャツ、
マドラスタイ、茶のリバースカーフの
モンクストラップ(右の紳士)。
(1938.4 esquire)
梳毛スーツであってもベージュのような
スポーティなものであれば、
マドラスタイを合わせることができる。
緑色のフェルト製キャバリアハット、
ブラウンのフランネルスーツ、
アイボリーのシルクシャツ、マドラスタイ、
茶と白のスペクテイターシューズ(右の紳士)。
(1937.8 esquire)
この場合、フランネルは春夏ものとして
着用していることに留意。

生成りのリネンスポーツコート、イエローシャツ、
マドラスボウタイ、茶のトラウザース、
茶のスエードシューズ。
(1935.5 esquire)
リネンのスポーツコートとの組み合わせは現代でも
よく見られる定番の組み合わせ。
ストローハット、グレーフランネルスーツ、
緑がかったオックスフォードシャツ、
マドラスタイ、フーラードポケットチーフ、
クレープソールのスペクテイターシューズ(左の紳士)。
(1939.2 esquire)

マドラスシャツ

マドラスシャツはリゾート地で着用されたスポーティなウェアであり、ポロシャツのような感覚で着用することができます。
スポーツコートを羽織る場合、色彩豊かなマドラスシャツとぶつかり合わないよう、無地のスポーツコートを選んでください。
コントラストの観点では、マドラスシャツに合わせてスポーツコートも暗すぎない色を選ぶとうまくまとまります。

SUN WORSHIPERS AT DOCTOR’S CAVE BEACH
WHEN the sun bakes down on Jamaica, the intelligent man defends himself like the one at left. A long glass of planter’s punch, a sunshade and tropical clothing. His shirt is made of India madras —the fabric is made in India, but the shirt is made up by West Indian natives. The lightweight trousers may be of any summer fabric—Palm Beach, tropical worsted, cotton, rayon, silk or mixtures. The shoes are ideal for vacation wear, reverse calf with crepe rubber soles and heels. They have a blucher front and no toe cap. The anklets are lightweight wool, ideal for golf and sailing. The Jippi Jappa hat with puggree band, popular among West Indian planters was recently cribbed by tourists.

ドクターズ・ケーブ・ビーチの太陽の礼拝者たち
太陽がジャマイカに照りつけると、知的な男は左のように身を守る。プランターズ・パンチのロンググラス、日除けの傘とトロピカルな服装。彼のシャツはインディア・マドラス製で、生地はインド製だが、シャツはカリブ諸島の原住民が仕立てたもの。ライトウェイトのトラウザースは夏用の生地なら何でもいい。パーム・ビーチ、トロピカル・ウーステッド、コットン、レーヨン、シルク、またはそれらの混紡。靴はバカンス履きに理想的なクレープソールのリバースカーフシューズ。外羽根で、トーキャップはない。アンクレット(足首丈の靴下)は軽量ウールで、ゴルフやセーリングに最適。パグリーバンド付きのパナマハットは、西インド諸島のプランターの間で人気があり、最近観光客に真似された。

1938.1 esquire
マドラスシャツ、
グリーンのショーツ、
ラバーサンダル
(1939 apparel arts)
Jason Jules 氏
https://www.mensfile.com/style-file/2020/6/19/
behind-the-wall-of-sound-t7ere

おわりに

今回は、マドラスについて解説しました。
マドラスは生地のことを指し、マドラスの代表的な柄がチェック柄です。
マドラスは伝統的に春夏の暖かい気候で着用するネクタイやシャツ等に用いられてきました。
マドラスタイやマドラスシャツは、シアサッカー、サンクロス等の生地や、リネン、コットン等の素材を使った温暖な気候に合ったスポーティなスーツ、スポーツコート、トラウザースと相性がよいです。
ブラウンやベージュ等のスポーティなものであれば、ウーステッドウールも合わせることができます。

マドラスは複数色で構成されていることから、派手なイメージがあるかもしれませんが、前述のようにビビットではなく、案外服装に取り入れやすいです。
面積が小さいネクタイやジャケットのインナーのシャツにマドラスを使えば、装いのよいアクセントになります。
ぜひ一度挑戦してみてはいかがでしょうか。

今回は以上になります。
コメント、リクエストがあればお気軽にどうぞ。
ではまた次の機会に。

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