はじめに
季節外れですが、したためていた記事をリリースしたいと思い、今回は、夏を代表するネクタイの一つである、シャンタンタイを解説したいと思います。
シャンタンタイとは

シャンタンは、経糸に生糸、緯糸に玉糸(玉繭からつむぎだした節のある糸)や紬紡糸(ちゅうぼうし:くず糸を集めてつくった太い糸)等をつかった織物で、節があるのが特徴です。




見えることも特徴の一つです。
シャンタン Shantang という名称は、絹の主産地であった中国の山東省 Shandong に由来するといわれています。

中国をイメージしたイラスト。
(1955.7 esquire)
シャンタンをつかったネクタイのことを、Shantung tie, Shantung silk tie 等と呼びます。
シャンタンタイは、伝統的に春夏の暖かい気候に着用され、春夏の代表的なネクタイです。
近年では、ざらざらとした素材感がフランネルやツイードに合うと解釈され、秋冬にも着用されることがあります。
着こなし例
シャンタンタイは、そのざらざらとした素材感から、滑らかなネクタイよりもスポーティな印象を与えます。
レップタイやフーラードタイとともに、ゴルフをプレーする際に着用されることもありました。
異常な暑さのためにネクタイをしているゴルファーは僅かだったけれども、ヘイゲン、サラゼン、ファレルといったよく知られたプロ・ゴルファーは主にクレープ、薄絹地、シャンタン、レップといった組織の絹のタイをつけるのを好んでいた。
O. E. Schoeffler, William Gale 著、高山能一訳(1981)『エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典〈日本語版〉』スタイル社、pp.407,408
シャンタンタイは、シアサッカー、サンクロス等の生地や、リネン、コットン等の素材を使った温暖な気候に合ったスポーティなスーツ、スポーツコートと相性がよいです。
また、滑らかなウーステッドスーツと粗いシャンタンタイを組み合わせることで、装いに適度なメリハリをつけることができます。

ネイビーのシャンタンタイ(右の紳士)。
オックスフォードシャツ、白いドット柄のポケットチーフ、
リバースカーフシューズ。
(1935.7 esquire)
ツルっとしたスーツ生地に、
シャンタンタイのラフな素材感が妙味を生みます。

茶色のチェック柄のオックスフォードシャツ、
サドルシューズ。(1935.8 esquire)

スーツに、シャンタンタイ。
(1939.1 esquire)

blogs/style-guide/the-italian-shantung-silk-tie
梳毛生地にシャンタンタイを合わせている。
すべてストライプ柄だが、ストライプの幅に
差をつけることでうまく合わせている点にも注目。

おわりに
今回はシャンタンタイについて解説しました。
5年ほど前には、シャンタンタイが店頭に並んでいるのを見かけましたが、近年はあまり見られず、認知度が低いように感じています。
春夏でもネクタイを締めるというドレスクロージングが好きな方には是非おすすめしたいネクタイです。
今回は以上になります。
コメント、リクエストがあればお気軽にどうぞ。
ではまた次の機会に。
コメント
コメント一覧 (3件)
あけましておめでとうございます。
前にウールネクタイの記事で、あくまでもウールのネクタイはウィークエンド向けと書かれていたかと思います。
フランネルのスーツ(グレー無地など派手でないもの)も平日の仕事着には本来不向きでしょうか?次の冬はタートルネックと合わせて着ようかと考えておりました。
基本的なことで恐縮ですが、教えて頂けると嬉しいです。
あけましておめでとうございます。
ビジネスシーンにグレー無地といったフランネルスーツを着用することが本来不向きということはございません。
ただし、職場の規程や慣習によっては推奨されない場合もあると思います。
例えば、茶のグレンチェック柄のスーツがビジネスシーンに用いられることもありましたが、日本のお堅い職場では受け入れられないこともあると思います。
逆に、スーツでなくてよいという職場であれば、コーデュロイのジャケットにウールのネクタイという装いも問題なく受け入れられることもあると思います。
したがって、現代において、古典的な視点で着用シーンと装いを明確に関連付けることが中々難しくなっています。
基本的にはその場のドレスコードに合わせることになろうかと思います。
(「ウールのネクタイはウィークエンドに相応しい」との一文だけ読んでしまうとミスリードしてしまう可能性があることを反省しました。
本来の趣旨は、本文記載の「ウールのネクタイは、 チェック柄や紡毛、コーデュロイ等、スポーティなスーツやジャケットに合わせるものです。」ということです。余計な一言として削除いたしました。)
一方で、アイテム同士の組み合わせについては、原則が存在します。
コメントいただいたように、例えば、ウールのネクタイとピンストライプの梳毛スーツという組み合わせは不適といったことです。
当サイトではこのような装いの原則を取り挙げてまいります。
話を戻すと、古典的な視点で、グレー無地のフランネルスーツがビジネスに不適ということはありませんし、
タートルネックが大丈夫であれば、無地のフランネルスーツは問題なさそうな気がしますね。(職場の規程や慣習にはご留意ください。)
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
早速のご回答、ありがとうございます。
現代において、古典的な視点で着用シーンと装いを関連付けるのは難しいとのお言葉、その通りだと思いました。
何となく感じていたのですが、こうして言語化して頂けると確信を持てて良かったです。
競馬場にクラシックスーツで来る人はほぼいないですし。
私の個人的な事情だと、ウォームビズとして、タートルネックを推奨されつつあるのです。
せっかくタートルネックを着るのであれば、少しでも原則にマッチした装いをしたいと思いつつ、根本的な勘違いをしていないか不安だったので質問しました(懐的に安い買い物ではないので…)。
置かれた境遇を鑑みて、自分なりにクラシックを解釈して装いを作るのが愉しみなんでしょうね。
大変参考になりました。引き続き勉強させて頂きます。
今年もどうぞよろしくお願いします。