はじめに
②シャツ・ネクタイ編の続きです。

クラシックなトラウザースはアウトプリーツ
クラシックなズボンの前のプリーツ(タック)は左右に2本ずつが原則で、プリーツの襞が外側に向いているものと内側に向いているものがある。クラシックを体現するプリーツは外側に向く。
落合正勝、2004、[新版]男の服装術 スーツの着こなしから靴の手入れまで、PHP研究所、p.74
日本では、プリーツの襞が外側に向いているものをアウトプリーツ、内側を向いているものをインプリーツと呼びますが、海外では、それぞれreverse pleats, forward pleatsと呼びます。
文字通り、外側に向いているプリーツは内側に向いているプリーツの逆向きであり、外側に向いているプリーツの方がクラシックということはありません。
一般に、インプリーツはスーツ発祥の地、英国の仕立て、アウトプリーツはイタリアの仕立てに関連付けられます。
アウトプリーツの方がクラシックと主張するのは、クラシコイタリアを信奉する氏の主義ではないかと思います。
ビジネススーツにトラウザースの裾の折り返しは必須
クラシックなスーツのズボンには、燕尾服、モーニング、さらにタキシードの例を出すまでもなく、もともとは折り返しがついていなかった。現代のビジネススーツには必須である。折り返しがないズボンはエレガントではないと断言するイタリア人もいる。
落合正勝、2004、[新版]男の服装術 スーツの着こなしから靴の手入れまで、PHP研究所、p.77
~中略~
折り返す幅は、スーツスタイルによって違ってくるが、目安は3.5~4センチまで。その範囲外は、たいていの場合バランスが悪くなる。
端的に言えば、ビジネススーツのトラウザースの裾の折り返しは好みです。
裾がシングル(plain hem)かダブル(cuff hem, turn-ups)かという解説は別の記事で行っています。

イタリアにおいてダブルが一般的であり、これもまた、氏の主義ではないかと思います。
ホーズの色は濃紺か、黒の無地に限る
クラシックなホーズの色は濃紺か黒の無地にかぎる。それ以外はクラシックなスーツスタイルにはフィットしないと心得る。
落合正勝、2004、[新版]男の服装術 スーツの着こなしから靴の手入れまで、PHP研究所、pp.260,261
靴下の色をズボンに合わせるか、靴に合わせるかという無駄なことは考えない。しごく単純に、黒い靴には黒無地、茶の靴には黒無地か濃紺、それだけでよい。
日本の著名な服飾評論家の発言とはとても思えない内容です。
正しい知識が日本に浸透することを願ってやみません。
紺のスーツの場合は濃茶の靴を選択すべき
黒い靴は何でもフィットするが、クラシックスーツの場合、正統性が目立ちすぎ、ときとして堅苦しい印象を人に与える。紺のスーツの場合は濃い茶色を選択すべきである。
落合正勝、2004、[新版]男の服装術 スーツの着こなしから靴の手入れまで、PHP研究所、p.120
フォーマルウェアには黒い靴が必須であり、黒い靴のもつ堅く引き締まった様子から、人によっては堅苦しく感じることもあるかもしれません。
ただし、紺のスーツに濃茶の靴を合わせるべきと断言するのはいささか言い過ぎです。
日本のビジネスシーンではかっちりとした服装を悪く思われることはほとんどありません。
イタリア人に好まれる茶靴を勧めるのは氏の主義であると思います。




以上、「落合正勝 男の服装術」の間違いの解説でした。
お読みいただきありがとうございました。
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