Macclesfield tie/ Spitalfields tie(マックルズフィールドタイ/スピタルフィールズタイ)

目次

はじめに

今回は、一本は持っておきたいオーセンティックなネクタイをご紹介したいと思います。

エレガントなフォアインハンド(結び下げネクタイ)

ウィンザー公 Duke of Windsor やニコラ・ド・ガンズビュール氏 Nicolas de Gunzburg 、アンソニー・ジョセフ・ドレクセル・ビドル・ジュニア氏 Anthony Joseph Drexel Biddle Jr. 、ケーリー・グラント氏 Cary Grant 、フレッド・アステア氏 Fred Astaire 、ロバート・モンゴメリー氏 Robert Montgomery 等に愛用されてきた黒とグレーあるいは黒と白の細かいチェッカボード柄のネクタイがあります。

Duke of Windsor
Nicolas de Gunzburg
Anthony Joseph Drexel Biddle Jr.
Cary Grant
Fred Astaire
https://www.hawesandcurtis.co.uk/blog/
heritage/fred_astaire
Robert Montgomery

このネクタイは、ドレッシーなネクタイで、モーニングドレスやドレス度合いの高いスーツを中心に着用されてきました。
エレガントなこのネクタイは、大人の男性にとって、1つ持っていて損はないアイテムだと思います。

The dressiest color for neckwear is no color at all: the highest ceremonies still call for formal white and semi-formal black bow ties. Next come silvery Macclesfield and Spitalfields neckties with their small, densely woven geometric patterns; best worn with dark suits, they are often referred to as “wedding ties,” and are well suited to such occasions.
最もドレッシーなネックウェアの色は無彩色で、フォーマルには白、セミフォーマルには黒のボウタイが使われます。次に、銀色のマックルズフィールドやスピタルフィールズのネクタイは、小さく密に織られた幾何学模様が特徴で、ダークスーツに合わせるのが最適で、しばしば「ウェディングタイ」と呼ばれ、このような場によく似合います。

https://alanflusser.com/musings-tutorials/tie-formality
モーニングドレスに細かいチェッカボード柄の
ネクタイ(右の紳士)
(1937.4 esquire)

細かいチェッカボード柄のネクタイに関連する名称として、 Macclesfield tie, Spitalfields(Spitalsfield) tie があります。
これらの名称について深掘りしたいと思います。

Macclesfield tie / Spitalfields(Spitalsfield) tie とは

まずは、アラン・フラッサー氏の解説です。

The Macclesfield necktie, a silk group of patterns made from small weaves of diamonds, squares, and circles, became especially fashionable among well-dressed British men in the early 1920s. These small geometrics were first made in contrasting tones of gray, black, and white, giving a marquetry effect across the surface of the tie.
~中略~
Referred to as a “wedding tie” in certain circles, this silvery necktie began its venerable career as the obligatory long tie for formal day attire, meaning weddings and other daytime celebrations. As smart lounge clothes began to solicit its company, the dressy Macclesfield necktie found its elite services broaden to include the embellishment of other less formal ensembles.
~中略~
Rising to prominence beside its silver Macclesfield confrere in the 1930s, this woven necktie was also named for the town that produced it, Spitalsfield(原文ママ※), on the outskirts of London.
The Spitalsfield design originally distinguished itself from the Macclesfield by its slightly fancier and larger motifs, which were arranged in allover settings of two-, three-, or four-color combinations.
マックルズフィールドネクタイとは、菱形、四角形、円形など、小さな織り目からなるシルクの柄のグループで、1920年代初頭、身なりの良い英国人男性の間で特に流行しました。この小さな幾何学模様は、はじめグレー、黒、白の対照的なトーンでつくられ、ネクタイの表面全体に寄木細工のような効果を与えていました。
~中略~
この銀色に見えるネクタイは「ウェディングタイ」と呼ばれ、結婚式といった昼間の正装に欠かせないネクタイとして、その由緒あるキャリアをスタートさせました。その後、スマートなラウンジウェアが普及するにつれ、ドレッシーなマックルズフィールドネクタイの活躍の場は広がり、フォーマルでない服装の装飾にも用いられるようになりました。
~中略~
1930年代、銀色のマックルズフィールドと並んで脚光を浴びたこの織り柄のネクタイは、生産地であるロンドン郊外のスピタルスフィールドの名前にも由来しています。
スピタルスフィールドのデザインは、もともとマックルズフィールドとは異なり、モチーフがややファンシーで大きく、2色、3色、4色の組み合わせで全面に配置されたものです。
※同書ではspitalfieldsではなく、spitalsfieldの表記

Alan Flusser, Dressing the Man, New York: Harper Collins Publishers, 2002, pp.147-149

上記を簡潔にまとめると、次のとおりです。
もともとは、Macclesfield tie と Spitalfields(Spitalsfield) tieには、色や柄の大きさに違いがあったことを指摘しています。

柄の大きさ柄の表現
Macclesfield tie無彩色※小柄※織り柄
Spitalfields(Spitalsfield) tie多色使い※大柄※織り柄
※あくまで”もともと”の違い

留意したいのは、アラン・フラッサー氏の解説によると、”もともとは”両者に違いがあったということです。
必ずしも、 Macclesfield tie =無彩色、 Spitalfields tie =多色使い、等とならないことに留意してください。
例えば、Arrow Ties (ネクタイメーカー)は、無彩色でないネイビー系の Macclesfield tie を取り挙げています。

What is a “Macclesfield”?
Macclesfield is a type of fabric construction used to produce small, close-together patterns, (The name’s the name of an English weaving town.) Above is a new Arrow Macclesfield – one of many fine Arrows priced at $1.
マックルズフィールドとは?
マックルズフィールドとは、小さく密着した柄を作るために使われる生地構造の一種で、(名前はイングランドの織物の町の名前です)上の写真は、新しいArrowのマックルズフィールドで、1ドルで販売されている多くの素晴らしいArrowのうちの1つです。

1941.11 esquire Arrow Ties の広告
ブルーのシャークスキン梳毛スーツ、
グレーブロードシャツ、
Macclesfield tie
(1946.9 esquire)
赤系の Macclesfield tie もある。






次に、多色使いでない無彩色の Spitalfields tie 。

濃いグレーの Spitalsfield tie を
身につけている(左奥の紳士)
(1936.1 esquire)






ブルー地に黒のストライプ、その黒のストライプを挟むようにグレーのストライプという、小柄とは言いにくいMacclesfield tie。

(1934.10 esquire)
もともと菱形、四角形、円形などから
出発したが、ストライプ柄の
Macclesfield tieもある。


下のイラストの③のように、小柄のSpitalfieldsもあります。

左から順に、
①Macclesfield stripe,
②a rep stripe,
③a herringbone pattern Spitalfields,
④a boucle weave stripe,
⑤all-over pattern Macclesfield
(1934.12 esquire)

エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典でも、「もともとは」という注釈をつけて、両者を解説しています。
アラン・フラッサー氏の解説と同様、もともとは Macclesfield tie は、小柄であったことを指摘していますが、上記で挙げた例のように、Macclesfield tie とSpitalfields tie の間に明確な違いはなくなっていきました。

Macclesfield(マックルズフィールド)
もともとはイングランドのマックルズフィールドで織られた、小柄の模様で、目が荒い織りのシルク生地。主としてネックウエアに使われ、普通、グレーと黒のような対照的な色合い、あるいは共柄の無地。マックルズ・フィールド・シルクは、スピットルフィールズに似ている。
~略~
spitalfields(スピットルフィールズ)
もともとはロンドンのイースト・エンドのスピットルフィールズ地区で織られた、総模様柄の厚地のシルク地:ネックウエアに使われる。

O. E. Schoeffler, William Gale 著、高山能一訳(1981)『エスカイア版20世紀メンズ・ファッション百科事典〈日本語版〉』スタイル社、pp.667,681

おわりに

今回は、オーセンティックなネクタイである、黒とグレーあるいは黒と白の細かいチェッカボード柄のネクタイをご紹介しました。

このネクタイは、 Macclesfield tie の代表例であり、モーニングドレスやドレス度合いの高いスーツに合わせるのに最適で、歴代のウェルドレッサーに愛用されてきました。

もともとは、 Macclesfield tie と Spitalfields tie は色使い、柄の大きさに違いがありましたが、次第にその区別はなくなり、織り柄という共通点のみ残りました。

世界的に有名な老舗プリントシルクメーカー ADAMLEY が Macclesfield に所在していることから、 ADAMLEY のプリントシルクを使ったネクタイを Macclesfield tie と称して販売していることや、 Macclesfield tie =プリントタイといった認識が一部見受けられることに留意してください。

今回は以上になります。
感想、リクエストなどお気軽にコメントください。
ではまた次の機会に。



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