「落合正勝 男の服装術」の間違い②シャツ・ネクタイ編

ボタンダウンは正統なスタイルではない

ブルックス・ブラザーズが衿にボタンをつけた訳は、ポロ競技に用いられるユニフォームの、シャツの衿のひらひらを固定したかったという明快な理由による。ボタンダウン・シャツは、もともと機能一辺倒のスポーティテイストの強いシャツなのだ。
ボタンダウンのシャツにネクタイが似合うのは、ブレザーを除けば、唯一ツィードの替え上着ぐらいのものである。ツィードのジャケットは、もともと英国で狩猟や釣りに用いられていた、きわめてカジュアル性の強い性格を具えているからだ。
ボタンダウンのシャツを、クラシックなスタイルにコーディネイトするのは大きな間違いである。
クラシックスタイルとは、昔からの伝統を受け継ぐ正統なスタイルという意味だ。昔ながらのスタイルということではない。スーツスタイルの正しいルールを継承した、時代時代を代表するスタイルである。
~中略~
機能的側面からスタートしたものは、すべからくクラシックにはなりえない。これは原理原則である。

落合正勝、2004、[新版]男の服装術 スーツの着こなしから靴の手入れまで、PHP研究所、pp.143,144

ボタンダウンカラーは、ジョン・E・ブルックス氏が英国で観戦したポロ競技から着想を得て、1896年にブルックスブラザーズより発売されました。
エスカイア誌 Esquire (1933年にアメリカ合衆国シカゴで創刊された世界初の男性誌)によれば、1920年以来、いつの時代でも、その人気の増減はあれど、一般に好まれたそうです。
これだけの歴史があるボタンダウンカラーをクラシックではない、正統なスタイルではないとは言えないと思います。

ブレザーやツイードのジャケットの他、フランネルスーツ、シアサッカースーツ、マドラスチェックのスポーツジャケット等スポーティーなスーツやジャケットにボタンダウンシャツを合わせてネクタイを締めるというのは良い組み合わせです。

正統な襟はスプレッドカラーのみ

クラシックなスタイルにコーディネイトさせるべきシャツは、襟に何もついていない、ごく普通のスタイルである。ネクタイを結ぶ逆Vの部分(タイスペースと称する)は、160度開いていなければならない。
~中略~
これは、イングリッシュ・スプレッドカラーと呼ばれ、~中略~
そのほかのカラースタイルは、クラシックの範疇に入らない。

落合正勝、2004、[新版]男の服装術 スーツの着こなしから靴の手入れまで、PHP研究所、pp.145,146

シャツのカラースタイルは、服装(ドレス~スポーツの度合い)や身につける人の顔の形等に合わせて決めていくものです。


また、アラン・フラッサー氏は著書の中で、流行に左右されない7つの襟型を紹介しています。
ボタンダウンカラー/レギュラーストレートポイントカラー(レギュラーカラー)/ピンカラー/ウィンザーカラー(ワイドスプレッドカラー)/イングリッシュスプレッドカラー(セミワイドスプレッドカラー)/タブカラー/ラウンドカラー(クラブカラー)

※イングリッシュスプレッドカラーは、いわゆるワイドスプレッドカラーを指す場合もあれば、セミワイドスプレッドカラーを指す場合もあります。

プレーンノットはシルクのネクタイに合わない

現代のエレガントな着こなしには、シンプルなダブルノットがよく似合う。
~中略~
いちばんシンプルなシングルノットは、首まわりが貧相に見える。~中略~とりわけ、シルク素材を用いたネクタイのシングルノットは、力強さに欠ける。
もともとシングルノットは、ラルフ・ローレンが、ネクタイの幅をワイドにする以前の結び方だ。スーツのラペルがきわめて細く、紐のようなネクタイの時代の産物である。クラシックスタイルに不可欠なシルクのタイ向きではない。

落合正勝、2004、[新版]男の服装術 スーツの着こなしから靴の手入れまで、PHP研究所、pp.220~222

上記の記述は、言うまでもなく、氏の好みそのものです。
シングルノット(別名プレーンノット、フォアインハンドノット the four-in-hand knot )は、現在においても最も標準的な結び方です。
一方、ダブルノットはそれほど一般的ではありません。

ちなみに、ラルフ・ローレン氏が Polo というブランド名でネクタイを発売したのは1967年です。
40年代後半から50年代前半のボールドルックが流行したとき、すでにネクタイの幅は広くなっていました。
エスカイア誌にて、1949年に4インチ1/2(約11.4cm)のネクタイが紹介されています。
現在一般的な幅が8cm前後であることから、随分と太いことが分かります。
その後、太いネクタイは一度廃れ、1966年に5インチ(約12.7cm)のネクタイが同誌で紹介されました。
ラルフ・ローレンがはじめてネクタイを太くしたと誤って解釈することのないよう、念のため補足です。

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